ラベル ル[ṛ]で始まる単語 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ル[ṛ]で始まる単語 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年4月29日土曜日

84.リシ(ऋषिः [ṛṣiḥ]) - マントラを発見した聖者・賢者



リシとは


リシという言葉は、「マントラを得た人・発見した人」

そして、「知識により、サムサーラの向こう側を見た人」とも定義されます。

(शब्दकल्पद्रुमः - ऋषति प्राप्नोति सर्व्वान् मन्त्रान् ज्ञानेनपश्यति संसारपारं वा इति)


ヴェーダと呼ばれる聖典は、マントラによって構成されています。

マントラとは、サンスクリット語の文章の集まりで、

人間の幸せの追求に役立つ知識を教えています。


サムサーラとは、自分の本質以外のものに幸せを求め、追いかけ続ける人生。

体験に幸せを求めている限り、サムサーラは続きます。

サムサーラの向こう側とは、つまり、あらゆる体験の主体である自分自身の本質です。


リシの語源



リシ(ऋषिः [ṛṣiḥ])という言葉の元となる、動詞の原型「リシ(ऋष् [ṛṣ])」は、
 
2500年前の文法家パーニニの定義によると、

「गतौ [gatau]」、直訳すると、「行く」となりますが、

それはつまり、「辿り着く」「得る」「理解する・知る」、

そしてものごとが明らかに「見える」という意味でも使われます。

 「マントラを得た人・発見した人」、「サムサーラの向こう側を見た人」という意味の

 リシ(ऋषिः [ṛṣiḥ])という言葉は、そのような意味で派生しているのです。


マントラを「発見した」とは?


マントラとは、ヴェーダを構成している、サンスクリット語の文章です。

それらの文章は、「発明された・著された」のではなく、「発見された」と言われます。


人間の経験とそれに基づいた理論、さらに憶測に基づいた思考を記したものは、

「哲学」とされます。

「物語」や「詩歌」 も、人間の創作です。


いっぽう、

この世界に常に存在していた法則や定理が、

熱心にひとつの研究に専念していた研究者によって見出されるように、

この世界の創造と共に常にある知識は、マントラという形で、

タパスによって鍛えられたマインドを持つリシ達によって発見されたとされます。 


ゆえに、ヴェーダで教えられているマントラは、特定の人物の作品ではなく、

マントラで教えられている知識は、人間の経験・思考の集積である智慧や、

ましてや哲学とも呼ぶことはできません。


では、マントラで教えられている知識とは、どのような知識なのでしょうか?

リシ達が知っているのはどんな知識?


「知識により、サムサーラの向こう側を見た人」

というのも、リシの定義にあります。

リシによって発見された知識を、「アールシャ・ヴィッディヤー(आर्षविद्या [ārṣavidyā])」と言います。

「アールシャ(आर्ष [ārṣa])」 = リシの、リシによって発見された、
(リシ(ऋषि [ṛṣi])→アールシャ(आर्ष [ārṣa])への変化については、下に説明します。)

「ヴィッディヤー(विद्या [vidyā])」 = 知識 

恩師プージャ・スワミジが名付けた、こちらのグルクラムの名前ですね。

ちなみに、グルクラムとは、先生の家という意味で、生徒が先生のもとに住み込みで、

祈りのある規律に沿った生活とセーヴァーをしながら、

朝から晩までガッツリ猛勉強する為の場所です。(のんびりだらだらする場所ではありません。)

クリシュナのグルは、サンディーパニー・リシ。プージャスワミジの最初の3年コースが開催されたグルクラムの名前ですね。


リシによって発見された知識は、上でも見たように、ある個人や宗教に属するものではなく、

人類全てに共通する知識です。

「人類全てに共通する」 とはつまり、

全ての人間、あらゆるものに共通する「真実」であり、「本質」である、ということです。

どれだけ悲しんでいても、怒っていても、嫉妬や憎悪に狂っていても、

心の状態に影響されず、触れられず、来ては去って行く感情や経験を、

ただただ平静に見つめている、

心の状態のみならず、身体の状態からも、過去の行いからも、

そしてこの世界のあらゆる何ごとからも、限界を与えられていない、

それらを平静に見つめながら、現実を与えている、完全に満ちた存在。

満ちているとは、全ての人間が常に探している、幸せの本質。

それが、本当の自分、自分の真実であり、本質であるということ。
 
それが、この広い世界のいつかどこかに、幸せを見つけ出そうとしてもがきまくっている、

自分という存在の、真実なのです。


自分自身の身体や心、感情、記憶、健康状態も、

そして、現在過去未来のあらゆる体験も全ては、この広い世界に含まれていて、

終わることの無い幸せ探しの地図の、一部分に過ぎません。


どのエリアを探究しても、そこで見つかる幸せは儚いものです。

なぜなら、探している場所を間違えているからです。


暗い自分の部屋の中で指輪を落としてしまったけれど、

「暗いから探せない。外は明るいから、外に行って指輪を探しましょう。」

と言っているのと同じことなのです。



マハルシ?マハリシ?


「偉大なリシ」という意味で、表記は、महर्षि [maharṣi] もしくは、महऋषि [mahaṛṣi] となります。

「ん」を除く、全ての文字に母音が含まれる日本語では、

Rの音が単品では表記できないので、「ル」とか「リ」とかでしか書けませんね。


महत् [mahat] = 偉大な 

という形容詞を前に付けた、複合語(サマーサ)です。


複合語が造られる過程は、先のアールシャと共に、
文末にパーニニ・スートラで解説しておきました。
ご興味のある方、文法を勉強されている方は、睨めっこしてみてください。

相変わらず、ヴェーダーンタとパーニニ文法に偏った話の展開ですが、

それが私の専門なので、当然ですね。。。





<< サンスクリット語一覧(日本語のアイウエオ順) <<



「マハリシ」という複合語の出来る過程

महांश्चासावृषिश्चेति महर्षिः/महऋषिः ।

महान् 1/1 + ऋषिः 1/1

महत् + सुँ + ऋषि + सुँ    
同格の言葉が複合語に。 (2.1.57 विशेषणं विशेष्येण बहुलम्। ~ समासः तत्पुरुषः)

महत् + ऋषि       
複合語になると、まとめてひとつのप्रातिपदिकになり、その中のसुप्は消去される。
(1.2.46 कृत्तद्धितसमासाश्च। ~ प्रातिपदिकम्, 2.4.71 सुपो धातुप्रातिपदिकयोः। ~ लुक्)

मह आ + ऋषि
महत् の後ろに同格の言葉のある複合語は、最後のत्がआに変わる。
(6.3.46 आन्महतः समानाधिकरणजातीययोः। ~ उत्तरपदे)

महा + ऋषि
मह の अ と、आ の間で、सवर्ण-दीर्घ-सन्धि が起きますね。
(6.1.101 अकः सवर्णे दीर्घः। ~ अचि एकः पूर्वपरयोः संहितायाम्)

महर्षि
आ と ऋとの間は、गुण-सन्धि ですね。(6.1.87 आद्गुणः। ~ अचि एकः पूर्वपरयोः संहितायाम्)

गुण-सन्धि の代わりに、オプショナルで、サンディが起きない現象(प्रकृतिभाव)が見られます。

その場合、前にある長音は短くなります。(6.1.128 ऋत्यकः।, लघुのअच्-सन्धि の最後のスートラです。)
महऋषि

इकारान्त-पुंलिङ्ग-शब्द として、हरिवत् に活用します。


リシ(ऋषि [ṛṣi])→アールシャ(आर्ष [ārṣa])への変化について。

ऋषेः इदम्, that which belongs to ṛṣi, リシに属するもの

ऋषि + ङस् + अण्    
「~に属するもの」という意味で、अण् という接尾語が、第6ケースで終わる名詞の原型の後に付きます。(4.3.120 तस्येदम्।)
अण्  のように、ケースで終わる名詞の原型の後に付く接尾語を、タッディタ(तद्धित-प्रत्ययः)と呼びます。

ऋषि + अण्       
タッディタで終わるひとまとりはप्रातिपदिकとみなされます。そして、上の複合語のように、その中のसुप्は消去される。
(1.2.46 कृत्तद्धितसमासाश्च। ~ प्रातिपदिकम्, 2.4.71 सुपो धातुप्रातिपदिकयोः। ~ लुक्)

ऋषि + अ       
अण् の最後の ण् は、इत् と定義され(1.3.3 हलन्त्यम्।)、消去されます。(1.3.9 तस्य लोपः।)

आर् षि + अ
इत् である ण् は、अङ्ग の最初の母音にヴリッディ(वृद्धि )を起こします。(7.2.117 तद्धितेष्वचामादेः।)

ヴリッディ(वृद्धि )とは、आ, ऐ, औ の3つの音ですね。(1.1.1 वृद्धिरादैच्।)
ऋ に一番近いヴリッディの音は、आ です。(1.1.50 स्थानेऽन्तरतमः।)
ऋ の音から変化した आ の後ろには、र् が付きます。(1.1.51 उरण् रपरः।)

आर् ष् + अ
अङ्ग の最後の इ が落ちます。(6.4.148 यस्येति च।)

これで、आर्ष の出来上がりです。



初めて見た人には、なんのこっちゃ?と思われて当然ですが、
少し勉強すれば、全てが繋がっているので、分かってきて面白く楽しくなります。
必要なのは、少しの時間を割いて作ることだけです。

文法の勉強は、脳の活性化に最適です。
「脳のヨガ」 とも呼びたいところです。
身体は毎日鍛えないと、しなやかに保てません。脳みそも同様です。
 物質的な身体を使ったヨガは、多くの人が何時間もかけてしているけど、
文法とか、思考能力を使うことは、カリユガに生きる人々は、
とても嫌がって一目散に逃げ出してしまいます。

せっかく人間として生まれた特権=ブッディという、
正しい思考が出来る可能性を秘めた、特別な能力を備えてもらっているのに、
間違った考えばかりに突き進んで、頭を空っぽにすることによってしか、
心の平和を得られないのは、MOTTAINAI。

正しい思考が出来る「可能性」としたのは、人間の考えとはその性質上、放っておいたら、
間違った考えに深く入り込むように出来ているからです。
「放っておいたら」、というのは、主観を取り除く努力を怠っていたら、というのと、
正しいプラマーナに触れないでいたら、という二種類の放置があります。

「XX筋を鍛える!」のと同じ熱意で、ブッディも鍛えて欲しいです。。。

2014年2月17日月曜日

12.リク(リグ)(ऋक् [ṛk] )- マントラ、韻文

ऋक् 
[ṛk]

feminine - マントラ、韻文


ヴェーダのマントラを指す言葉です。

パームリーフに書かれた文献

リグの語源


ऋच्छति स्तौति इति ऋक् । ṛcchati stauti iti ṛk |
「賛美する」のが「リク」、すなわちマントラです。

誰を賞賛しているのかと言うと、デーヴァター達です。


ヴェーダに登場するデーヴァターとは


デーヴァター達とは、重力や、生理機能や、心理機能という形で、

宇宙全体で働き続けている、様々な法則のことです。

「ヴァルナ」と言う名ののデーヴァターは、浄化作用を主に担当しています。

「ヴァーユ」と言う名の風のデーヴァターは、動力を担当しています。

知識のデーヴァターは、「メーダー」と言う女神です。

彼女の担当は、3つ。

1.知識の正しい把握と理解、
2.その記憶、
3.そして、記憶した事を必要な時に取り出せる力
です。

ちなみにこれは、プージャ・スワミジが、私にくれた名前です。

太陽神「スーリヤ」は視覚担当、火の神様「アグニ」はメッセンジャー。

光に関わる原理、つまり視覚、言語伝達、
間違った認識を燃やし尽くし、正しい理解を照らす、
太陽神「スーリャ」
火の儀式で、捧げられたものを燃やし、
各デーヴァターに向けて届けて回るのがアグニのお仕事。
走るのが速いことになっているのだけれど、迅速感あふれる絵はみつかりません。
誰か描いてください!

デーヴァター達との正しい関わりあい方を教えるのが聖典ヴェーダ


皆、365日休み無く、宇宙全体で、私達の身体の中でも、働き続けてくれているのです。

私達の身体や心、家族や社会が健康に機能し、

雨風や森や海や星が、私達の幸せを支えてくれるように機能しているのは、

全て、デーヴァター達の働きのおかげです。

そんなデーヴァター達に、「有難うございます。これからも何かとどうかよろしくお願いします。」

という気持ちの表現が、「デーヴァター達への賞賛・賛美」なのです。

誰だって、「あなたって素敵!出来る人ね!」と褒められると、やる気が出てくるものです。

ましてや、贈り物を捧げられたり、特別に優待されたら、もう、何が何でも張り切ってしまうものです。

それは、人間はもちろん、動物だって、植物だって、そしてデーヴァターだって同じ事です。

生きているものは全て、褒められたいものだっていうのは、面白い事実ですね。

褒め方にもいろいろあって、下手な事を言って、カチンとこられては大変ですから、

「こういう風に賛美すればよい」と教えてくれているマニュアルが、ヴェーダなのです。


デーヴァへの賛美とは?


こう書くと、おべっかを使って、自分の思うように物事を動かそうとしているように見えますが、

もし、動機がそうであっても、最初はそれで構わないのです。

デーヴァターへの賛美の言葉や贈り物を捧げているうちに、

全ての中にデーヴァターを見られるようになるのです。

普通誰もが持っている、「自分が頑張ってやっている!」という態度や、

「世界VS自分」という、緊張とストレス、アップ&ダウンの人生観から、

「全てはデーヴァターによって動かされている」

「自分の能力も、功績も、全てはデーヴァターの働き」という、

謙虚で、視野の広い世界観にシフトして行くのです。

この世界観のみが、本当の意味で平和で、客観的な心を作ってくれるのです。

それは、一日にして成るものではありません。

毎日の生活の中で、デーヴァターと正しく関わり続ける為の生き方を、

ヴェーダは教えてくれているのです。

ヴェーダは、言葉から成る文章によって構成されています。

ヴェーダの中の、韻文の一句の単位を、ऋक् [ṛk] (リク)と呼びます。


子供の幸せを願い続け、「こうすればいいのよ」と教え続ける母、シュルティ(ヴェーダ)


「シュルティ(ヴェーダのこと)」や「ウパニシャッド」が

女性名詞であるように、「リク」もやはり女性名詞です。

前回の「ウマー」でも見たように、知識を授ける役割の象徴は、女性なのですね。

Compassion(救いたいと願う深い思いやり)に溢れる、

母のような存在が、知識の女神、サラスヴァッティーです。

「シュルティ」は、「あなた自身の幸せを願う母親の100倍の存在」という言葉で説明されます。

幸せの追求において、無知や混乱にまみれているが故に、人々は奔走を続けます。

その中で稀に、「自分ではどうにもならない」ことを見極め、助けを求める人がいます。

助けを求めに来た人に対して、

「お馬鹿な事ばっかり繰り返してるから、こんな事になるんでしょ!もう知らない!」

と見捨てる事をせず、

「仕方ないわねぇ」と、

何回でも解かるチャンスを与えてくれるのが、

Compassion溢れる母親である、「シュルティ」なのです。

そして、シュルティの中にある、マントラ(韻文)の部分が「リク」と呼ばれるのです。


== ऋक् [ṛk] - リク(リグ)が使われている文献 ==

バガヴァッド・ギーター9章17節


वेद्यं पवित्रमोङ्कार ऋक्साम यजुरेव च ॥
vedyaṃ pavitramoṅkāra ṛksāma yajureva ca ||

私(バガヴァーン)は、知られるべきもの(vedyaṃ)である。

それは、全てであり(oṅkāraḥ)、その知識は知る人を清める(pavitram)

(つまり、知る人の本質が、何からも影響を与えられないブランマンだと分かる)。

そして、私はリグヴェーダであり、サーマヴェーダ、ヤジュルヴェーダである。

(知識を教える知識体系である。)





<< 前回の言葉 11.ルタ(ऋतम् [r̥tam])<<

真実という意味のサンスクリット語。

ルタとサッティヤ、2ステップの真実の意味を説明します。

   

>> 次回の言葉 13.エーヴァ(एव [eva])>>

「~だけ」と限定するサンスクリット語です。

インド哲学では限定にも何種類もあるのですよ。

2014年2月13日木曜日

11.ルタ(ऋतम् [r̥tam])- 真実

ऋतम् 
[r̥tam] 

neuter - 真実


この言葉には様々な意味がありますが、

ヴェーダーンタ・シャーストラ(文献)で使われている意味を見てみましょう。



「ऋतम् [r̥tam] - ルタ」と聞いてまず思い出すのが、

タイッティリーヤ・ウパニシャッドの最初の章のシャーンティ・パータです

あの有名な、शं नो मित्रं शं वरुणः... śaṃ no mitraṃ śaṃ varuṇaḥ... というマントラです。

このシャーンティ・パータの中で、

ऋतं वदिष्यामि । ṛtaṃ vadiṣyāmi |
「私は真実(ルタ)を話します」

と出てきます。そして、間髪をいれずに、

सत्यं वदिष्यामि ।satyaṃ vadiṣyāmi |
「私は真実(サッティヤ)を話します」

と続きます。

ルタ(ऋतम् [r̥tam] )と サッティヤ(सत्यम् [satyam])は両方とも

「真実」という意味です。

同じ意味の言葉が同時に使われている場合は、

双方の意味の違いを探さなくてはなりません。

これは、文献を読む伝統の中のテクニックのひとつです。

意味の違いは、下でゆっくり見ていきます。

वदिष्यामि [vadiṣyāmi] は「(私は)話します」という意味なので、

合わせてると、どちらも「私は真実を話します」になります。

しかし、マントラの前の行から「त्वाम् [tvām] あなた(ブランマン)」が降りてくるので、

「私は、あなたである真実を話します」となります。

それってどういう意味なのでしょうか?

言葉を一つずつ見て行きましょう。


真実のステップ1 裏を取る


ここでの真実、ऋतम् [r̥tam] (ルタ)は、

特に「何をすべきか」「何を言うべきか」に関して、

自分が正しいと思っているだけではなく、文献や伝統を参考にして、

しっかり正しい事を確認するステップを踏んだ真実です。

人間は無知を持って生まれてくる訳ですから、

自分が正しいと思っていることが間違っていても当然なのです。

そこを、面倒くさがらずに、頼れる情報源に頼り、自分でもしっかり思考して、

きっちり責任を持って「正しい」と言える真実です。


インテレクチュアル・レージネス(思考のだらしなさ)を捨てる


「私は、あなたである真実(ルタ)を話します」とは、

「だらしない考え」を持たない、と言う誓いです。


物理的にだらしない人はあまりいません。

みんな、朝から晩まで、いろんな事に走り回りながら「時間が無い」と言っています。

しかし、なぜそんなに忙しいのか、しっかり考える事を人はしません。

「幸せになりたい」事と、「忙しく走り回る」事との関係を深く検証しないのは、

「思考的だらしなさ」です。


サットサンガ(サポートシステム)があってこそ


何をするべきか、するべきでないか、何を言うべきか、何を言うべきでないか、

それらをはっきりさせるには、様々なサポートシステムが必要です。

サポートシステムとは、

正しい考えに導いてくれる人が周りにいること。

サンスクリット語で「サット(善い人達の)・サンガ(集まり)」です。


グレース(恩恵、幸運)があってこそ


ヴェーダなどの文献は、それらをはっきりさせるための文献ですが、

その文献の理解ににアクセスがあること。

正しい考えが出来る、執着や嫌悪から自由な、客観的理論的な思考が持てること。

これらを持つには、多大なグレース(幸運さ)が必要です。

無知を持って生まれた自分独りではどうにもなりません。

「助けが必要」と認めた時初めて、「助けを受け取る」事が出来るのです。

何をするべきか、何が正しいのか、何が真実なのか、

の正しい理解は、全てがうまくアレンジされてこそなのです。

だから、全てがうまくいくように、全てであるあなた(ブランマン)が、

全てを私の為にうまくアレンジして下さい。=(イコール)グレースを与えてください。


グレースは何処にでもある。それを受ける態勢に自分がなっているか?


バガヴァーン(=ブランマン)は、全てなので、

24時間何処にいても、サポートが受けられます。

その24時間365日のサポートを受け取る準備が自分に出来ているでしょうか?

祈りは、助けを受け取る準備を、自分の中で整えてくれます。

この祈りが「私は、あなたである真実(ルタ)を話します」に含まれているのです。

「思考的だらしなさ」を克服し、正しく考える習慣を持つ事が、

ゆくゆくは、人生の意味を見抜く事につながるのです。


真実のステップ2 話す。


考えや理解のレベルでの真実が「ऋतम् [r̥tam](ルタ)」である時、

それを言動に移すのが「सत्यम् [satyam] (サッティヤ)」です。

自分が何をすべきかについて、正しい理解が持てる事、

そして、それを言葉や行動に移せる事、

そのためのグレース(幸運さ)への祈りが、

このタイッティリーヤのシャーンティ・パタにこめられているのです。


== ऋतम् [r̥tam] - ルタ が使われている文献 ==

カタ・ウパニシャッド 1・3・1

ऋतं पिबन्तौ सुकृतस्य लोके ...
ṛtaṃ pibantau sukṛtasya loke ...

ここでの意味も、ऋतम् [r̥tam] = सत्यम् [satyam] (サッティヤ)ですが、

「必ず実を結ぶ」という意味で、カルマの結果を指しています。
(シャンカラ・バーシャ:ऋतं सत्यम् अवश्यंभावित्वात् कर्मफलं पिबन्तौ।)

カルマの結果とは、つまるところ、

自分の身体や心理も含めた、この宇宙の現在過去未来の全てです。

タイッティリーヤの中で「ऋतम् [r̥tam](ルタ)」と呼ばれている

ブランマンが全てである事と、ここで繋がっているのです。








>> 次回 12.ऋक् [ṛk] - ルク(リグ)>>    



Medhaみちかの関連サイト

人気の投稿(過去30日間)

【新刊のお知らせ】
ヨガクラスの座学や、チャンティングのクラス、
サンスクリット語入門のクラスの教材として活用してください。
 

 すぐ読み書きできるようになる
サンスクリット語 デーヴァナーガリー文字 
練習帳 & 問題集
 
 わかりやすいサンスクリット語の正しい発音と表記
のメソッドに沿った、全ての文字の練習帳と、 
早く読み書きできるようになるための問題集です。

 
 初心者にはわかりづらい、連続した子音文字について、
よく見かけられるもの、そして応用の利くものを集め、
豊富な例と共に紹介しています。
お祈りの句の書き写しの練習も紹介しています。