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2014年3月2日日曜日

18.アイシュワリヤ(ऐश्वर्यम् [aiśvaryam])- 権力者であること

ऐश्वर्यम्
[aiśvaryam]


neuter - 権力者であること






アイシュワリヤの語源


前回のऐक्यम् [aikyam] アイキャ と同じように派生した言葉です。

「ईश्वर [īśvara] イーシュワラ」(権力者)という言葉に、

「ष्यञ् [ṣyañ] 」(~である事)という接尾語が付いて、

ऐश्वर्य [aiśvarya] (アイシュワリヤ)になります。

「ष्यञ् [ṣyañ] 」(~である事)という接尾語で終わる言葉は、

中性名詞と決まっているので、

ऐश्वर्यम्, ऐश्वर्ये, ऐश्वर्याणि ... と中性名詞の活用をします。


アイシュワリヤの意味


「ईश्वर [īśvara] イーシュワラ」という言葉の意味は、前に勉強しましたが、

それに(~である事)という接尾語が付くと、どのように使われるのでしょうか。


バガヴァーンとは


「バガヴァーン」の定義に、ऐश्वर्य [aiśvarya] (アイシュワリヤ)が出てきます。

バガヴァーンとは、文字通りに解釈すると、”「バガ」を持っている者”となります。

では、その「バガ」とは何ぞや?という事になりますね。

「バガ」の意味とは、、、

その1:

ऐश्वर्यस्य समग्रस्य धर्मस्य यशसः श्रियः ।
ज्ञानवैराग्ययोश्चैव षण्णां भग इतीरणा ॥
aiśvaryasya samagrasya dharmasya yaśasaḥ śriyaḥ |
jñānavairāgyayoścaiva ṣaṇṇāṃ bhaga itīraṇā ||

この宇宙にある全ての、そして絶対的な、以下の6つの要素のことを「バガ」と呼びます。
  1. ऐश्वर्यम् [aiśvarya] (アイシュワリヤ)・・・ 絶対的な統治/コントロールする力
  2. धर्मः [dharmaḥ](ダルマ)・・・ 全ての秩序
  3. यशः [yaśaḥ](ヤシャス)・・・ 全ての名声
  4. श्रीः [śrīḥ](シュリー)・・・ 全ての富
  5. ज्ञानम् [jñānam] (ニャーナ)・・・ 全ての知識
  6. वैराग्यम् [vairāgyam](ヴァイラーギャ)・・・ 絶対的公平
「全て」そして「絶対的レベル」は、壮大過ぎて把握出来無い感じがするので、

「個人レベル」から、この6つを見てみましょう。

  1. ऐश्वर्यम् [aiśvarya] (アイシュワリヤ)・・・統治/コントロールする力
個人の場合で考えると、目の前に歩いている小さなアリンコさんに対して、私達は、アイシュワリヤを持っています。

しかし、アリンコさんが、耳の中に入ってしまうと、私達にはもう、アイシュワリヤはありません。

このアイシュワリヤを、絶対的レベルで有しているもの ― それは全体であり、法則そのものでしか有り得ません。

     2. धर्मः [dharmaḥ](ダルマ)・・・ 秩序

サッティヤ(「ルタ」の項を参照)や、アヒムサー(「アウシャディー」の項で紹介予定)といった、価値や態度は、個人の場合だと、個人の限度や状況に応じて、妥協されまてしまいます。

個人の限度が無いのが、全体であり、絶対であるダルマです。

     3. यशः [yaśaḥ](ヤシャス)・・・ 名声

個人の名声は、いろんな意味で限られていますね。その限度が無いのが全体です。

     4. श्रीः [śrīḥ](シュリー)・・・ 富

これに関しては、個人の限度は分かりやすいですね。ここにある全ての富を指して、バガといいます。

    5. ज्ञानम् [jñānam] (ニャーナ)・・・ 知識
  
個人の知識は限られています。この宇宙の表現の全ては知識であり、その知識全体を指して、バガと呼ぶのです。

    6. वैराग्यम् [vairāgyam](ヴァイラーギャ)・・・ 公平

個人とは、沢山の好き嫌い=限度にまみれているので、公平さに欠けます。

全体の場合はその問題がありません。

これら6つの全体、そして絶対的レベルで有しているのが、バガヴァーンです。


その2:

話はぜんぜん変わりますが、南インドのケララ州の家庭の多くでは、

家屋の上部に、ラクシュミーの絵が飾られてあり、そこには、

「この家は、ラクシュミーのアイシュワリヤによって成り立っています」

と書かれているそうです。

伝統的なインドの文化では、結婚生活や、家庭を守っていく上で、

祈りの姿勢、つまりは「グレース」を認識する姿勢が、強調されています。

これも、家族や社会が、個人の為にうまく機能するための、ヴェーダ文化の智恵なのです。

結婚関係や家族関係が、

"個人の熱情や欲求を満たす事を目的とした関係”

ではなく、

"幸せを与えあいながら、成長できる関係”

として認識するには、ある程度の自分や世界についての理解が必要です。

自分は本当は何を求めているのか?

人間としての本当のゴールとは

世界は、私に対して、何の為にあるのか?

などの理解です。

どんな人間関係でも、そこに幸せや安定を探しているうちは、

いい気分と、がっかりした気分を交互に味わい続けるしかありません。


個人、宇宙全体の認識、祈り


「世界全体」という、もっと大きなヴィジョンを持つ為に、「祈り」があります。

大きなヴィジョンを持ちながら、人間関係を築く時、そこには、

責任感があり、宇宙全体に対する信頼感があり、

本当の意味での、心の平和があります。


このような祈りを思い出させてくれるような習慣が、

家庭の中で代々伝わっている文化は素晴らしいです。

この文化がこれからも伝わりますように。


== ऐश्वर्यम् [aiśvaryam] - アイシュワリヤ  が使われている文献 ==

ダクシナームールティ・ストートラム 最終節
सर्वात्मत्वमहाविभूतिसहितं स्यादीश्वरत्वं स्वतः
सिद्ध्येत् तत्पुनरष्टधा परिणतं चैश्वर्यमव्याहतम् ।
sarvātmatvamahāvibhūtisahitaṃ syādīśvaratvaṃ svataḥ
siddhyet tatpunaraṣṭadhā pariṇataṃ caiśvaryamavyāhatam |

ダクシナームールティ・ストートラムについて、プージャスワミジのレクチャーを元に、
意味だけでなく、文法的詳細を展開した本を書きました。
書き出すと長くなるので、この節の意味はまた今度。。。





<< 前回の言葉 17.ऐक्यम् [aikyam] - アイキャ <<

ひとつであること

   
        

>> 次回 19.アウシャディー औषधी - [auṣadhī] >>

薬草、ハーブ、野菜、食べ物を表すサンスクリットの言葉です。

2014年2月25日火曜日

17.アイキャ(ऐक्यम् [aikyam] )- 一つであること

ऐक्यम् 
[aikyam]


neuter - 一つであること





ナマステ、
ただ今リシケシです。

日本語で「ひとつであること」と書くと、なんか寂しい感じがしますが、

英語で言うと、"oneness"(ワンネス)って聞こえがいいですね。


サンスクリットをはじめ、他の言語でも、

名詞の後ろに、接尾語を付けることにより、新しい名詞を作ることが出来ます。

名詞 + 接尾語 = 新しい名詞

「一つ」という名詞に、「~であること」という意味の接尾語を付けると、

「一つであること」になりますね。

英語でも、「one」という名詞に「~ness」という接尾語を付ければ、

「oneness」になります。


サンスクリット語で「1」「一つ」は、「エーカ एक [eka]」という名詞です。

「ष्यञ् [ṣyañ]」という接尾語は、「~であること、~ness」という意味です。

「エーカ एक [eka] +「ष्यञ् [ṣyañ]」=「アイキャ ऐक्य [aikya]」

となるわけです。

音がえらく変わりましたが、何が起きているかというと、

1.最初の母音に「ヴリッディ(वृद्धिः [vṛddhiḥ])」 が起きた。

「ヴリッディ(वृद्धिः [vṛddhiḥ])」 とは、आ [ā], ऐ [ai], औ [au] の3つの音を指します。

  • अ [a]  ⇒ आ [ā]
  • इ [i]   ⇒ ऐ [ai]
  • उ [u]   ⇒ औ [au]
  • ऋ [ṛ]  ⇒  आर् [ār] (आ [ā]に र् [r] がくっついた)
のように変わります。


2.最後の音がドロップして、接尾語の「य [ya]」がくっつく。

接尾語は「ष्यञ् [ṣyañ]」でしたが、「ष् [ṣ] 」と「ञ् [ñ]」が落ちて、「य [ya]」だけ残るんですね。

ここなへんは、パーニニ文法勉強会を参考にして下さい。

このように、2つの変化が起きて、

「エーカ एक [eka]」(ひとつ)が、「アイキャ ऐक्य [aikya]」(ひとつであること)

になるわけです。

同じように、

सवर्णः [savarṇaḥ ]  ⇒ सावर्ण्यम् [sāvarṇyam ]
समानाधिकरणम् [samānādhikaraṇam ]  ⇒ सामानाधिकरण्यम् [sāmānādhikaraṇyam ]
विरागः [virāgaḥ ]  ⇒ वैराग्यम् [vairāgyam ]
विलक्षणम् [vilakṣaṇam ]  ⇒ वैलक्षण्यम् [vailakṣaṇyam ]
निश्चल [niścala ]  ⇒ नैश्चर्यम् [naiścaryam ]
सुखम् [sukham ] ⇒  सौख्यम् [saukhyam ]
दुर्बलम् [durbalam ] ⇒  दौबल्यम् [daubalyam ]
कृत्स्नम् [kṛtsnam ]  ⇒ कार्त्स्न्यम् [kārtsnyam ]

おっと文法の話が長くなってしまった。


「ひとつであること」 とわざわざ言うからには、

2つ以上のものがある事が前提にある訳です。

この世界には、無数のものが存在していますね。

無数のものも、突き詰めると2つになります。

私と、それ以外のもの全てです。

「私 VS(対) 世界」の世界観で、私達は戦いながら生きています。

ヴェーダーンタは教えます。

私も、世界も、本質的には一つなのだと。

例えるなら、私も世界の全ても、真っ白の画用紙に描かれた絵のようなものです。

どんな図柄でも、本質は、ただただ真っ白は一つのキャンパスなのです。

本質的には一つだけど、その上に無限に広がる様々な色や形があり、

その中の、小さな小さな点のような存在が、この私。。。

いやいや、その小さな点が私じゃなくて、それに存在を与えている画用紙が本当の私。

だって、色や形は、画用紙無しには存在出来無いでしょう。

無限に広がる色や形の全てが、イーシュワラ

それは私と、本質的にも、表現的にも、全く離れていない。

在るのはただ一つ。

もし、そうなら、私が手に入れるべくして追いかける対象、

今ここにいる私以外の、2つ目のものなど、もう何も無い。

満たされるべき望みは、「在るのはただ一つ」という知識によって、

いっぺんに満たされてしまった。


== ऐक्यम् [aikyam] - アイキャ  が使われている文献 ==

जीवेश्वरैक्यम्
jīveśvaraikyam

ジーヴァ(個人)とイーシュワラ(全体)が本質的には、ひとつであること
を解いているのがヴェーダーンタです。



<< 前回の言葉 16.ओष्ठः [oṣṭhaḥ] - オーシュタ <<

くちびると言う意味のサンスクリット語です。

   


>> 次回の言葉 18.アイシュワリヤ(ऐश्वर्यम् [aiśvaryam] )>>




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