=目次=
1.印刷版辞書:2.梵日辞書(サンスクリット語→日本語)に関して:
3.電子版(PC&アンドロイド用)
4.オンラインのサンスクリット辞書
5.サンスクリット語の辞書の引き方:
6.サンスクリット辞書の役割:
1.印刷版辞書:
The Concise Sanskrit-English Dictionary
Vasudeo Govind Apte (著)
A5サイズで、辞書の中では一番小さくて携帯に便利。最近改訂して活字が綺麗で読みやすくなりました。とりあえずの意味と、名詞の性や、動詞のグループを確認するのには問題ない収録数です。10年前に初めて買ったときからずっと同じものを持ち歩き用に愛用しています。
この辞書の電子版は存在しません。
The Student's Sanskrit - English Dictionary
Vaman Shivram Apte (著)
ペーパーバックで、特に大きすぎず、十分な情報量で、電子版は私の知る限り存在しませんが、紙の辞書が好きな人は一冊持っていても損はありません。私の持っているのは30センチの正方形で厚さは4センチくらいです。
以下に紹介する2冊の辞書は、どちらとも、The Practical Sanskrit-English Dictionary V.S.Apte (著)です。この辞書は、単語の派生まで載っているので、より深く単語の意味を理解できます。
それぞれの名詞には、派生の元となっているダートゥ(動詞の原型)もしくはプラ―ティバディか(名詞の原型)と、プラッティヤヤ(接尾語)が明記されています。この辞書の電子版も存在しません。
インドではモーティラル、日本では臨川書店が出版しています。
梵英辞典 改訂増補版
The Practical Sanskrit-English Dictionary
V.S.アプテ (著)
お薦めは絶対に日本版です。値段は張りますが、その価値はあります。
インドでもアメリカでも、お金のある人は日本版を購入しています。
The Practical Sanskrit - English Dictionary: Revised and Enlarged Edition Vaman Shivram Apte (著)
黒の合成皮革カヴァーのインド版は値段はお手頃ですが、私の知る限り、乱丁本しか見たことがありません。。。
ちなみに、インドで買う文法の本は、中身が一束(16ページ分)抜けていることがしょっちゅうあります。書店で買う場合には、ページ番号をザーッと見て、乱丁が無いか確認するべきです。
1ページだけ抜けるということは無く、抜けている場合は16ページ単位なので、10の位の桁だけを追っていれば大丈夫なので、案外速く、1分位でチェック出来ますよ。
お勧めしない辞書:
Sanskrit English Dictionary
M. Monier Williams (著)
モニエル・ウィリアムズのは、とにかく大きすぎて、机の上にあっても引く気がしません。大きいのでハードカヴァーしかありません。
電子版がオンラインでもオフラインでも存在するので、今更印刷版を持つ必要はありません。
リシケシから南インドに引っ越す時に、ブランマチャーリーにあげました。
また、彼のヴェーダに対する態度は植民地支配的だと聞いたことがあります。私は日業的にこの辞書を他の梵梵辞書と使い比べていますが、
私個人の感想は、動詞の原型に関してはなかなか使えますが、
複雑な名詞に関しては、いい加減な情報が多いように思います。
2.梵日辞書(サンスクリット語→日本語)に関して:
私は使ったことが一度もないので、まだ何とも言えませんが、ヴェーダーンタの勉強をする上で、既存の梵日辞書は全く必要ありません。それは保証します。
日本語の変な意味が頭にこびりついて、それが拭えない先入観になってしまい、先生の教える正しい意味が入ってこない、となってもらっては困るので、
自分の生徒さんには絶対に使って欲しく無いですね。
英語ならサラッと聞き流せるけれども、
日本語だと一瞥しただけで脳裏に焼き付いてしまいそうなので。。。
しかし、正しい伝統に沿ってヴェーダーンタを教えたり、勉強したりしている人が作った用語集などは便利だと思うので、あれば活用すれば良いでしょう。
3.電子版(PC&アンドロイド用)
PC用のサンスクリット辞書はどれがお勧めですか?という質問をよく受けるのですが、ゴールデン・ディクショナリーがずば抜けて一番ですね。ダウンロードしてオフラインで使える辞書です。
ゴールデン・ディクショナリーとは、単なる辞書の枠組みのアプリで、そこに好みの辞書ファイルを登録して使います。
アンドロイド版は「Color Dictionary」ですが、辞書ファイルは同じものが使えます。
多数のサンスクリットの辞書(梵英、梵梵)とサンスクリット文法書が、ゴールデン・ディクショナリー用にデジタル化されています。
私がお気に入りで良く使う、वाचस्तपत्यम्, शब्दकल्पद्रुम, अमरकोश といった梵梵辞書の他にも、MWもあります。
そして सिद्धान्तकौमुदी, लघु, काशिका, न्यास, बालमनोरमा, धातुकोश 等の文法書もデジタル化されていて、スートラ番号から引けて便利です。
必要なファイルを以下のドライブにまとめました。
多数のサンスクリットの辞書(梵英、梵梵)とサンスクリット文法書が、ゴールデン・ディクショナリー用にデジタル化されています。
私がお気に入りで良く使う、वाचस्तपत्यम्, शब्दकल्पद्रुम, अमरकोश といった梵梵辞書の他にも、MWもあります。
そして सिद्धान्तकौमुदी, लघु, काशिका, न्यास, बालमनोरमा, धातुकोश 等の文法書もデジタル化されていて、スートラ番号から引けて便利です。
必要なファイルを以下のドライブにまとめました。
https://drive.google.com/open…
リンクをクリックすると、Googleドライブのページが開きます。
リンクをクリックすると、Googleドライブのページが開きます。
その中に、「GoldenDIct設定手順」というPDFファイルがあるので、それをまずダウンロードして、その手順に沿ってインストールすると良いでしょう。
インストールの手順は、私の記憶を頼りに書いたので、間違っているかも知れません。興味のある方は実際にやってみて、違いがあれば修正報告をお願いします。。
1.上のリンク内にある全てのファイルをダウンロードする。
2.exe fileを実行して、Golden Dictionaryをインストールする。
3.新しいフォルダを任意の場所に作成し、exe file以外の全てのファイルである辞書ファイルを、そのフォルダ内にまとめて置いておく。
4.Golden Dictionaryを立ち上げて、Edit - Dictionaries... - Files タブ - Add ボタン - 前のステップで作成したフォルダを指定する。
5.文字が読みにくければ、GoldenDict font change to Sanskrit 2003.zipを実行する。
で大丈夫だと思います。
アンドロイドからは、
1.PlayStoreから、Color Dictionaryをインストールする。
2.上記のリンクから、辞書ファイル(Amara等)をひとつひとつ開けて、ファイル単位で全て選択し
自分の端末(電話機)にダウンロードする。
3.ファイルマネージャーから、Downloadのフォルダにある辞書ファイルを、Dictionaryフォルダーに移す。
これで完了。
1.上のリンク内にある全てのファイルをダウンロードする。
2.exe fileを実行して、Golden Dictionaryをインストールする。
3.新しいフォルダを任意の場所に作成し、exe file以外の全てのファイルである辞書ファイルを、そのフォルダ内にまとめて置いておく。
4.Golden Dictionaryを立ち上げて、Edit - Dictionaries... - Files タブ - Add ボタン - 前のステップで作成したフォルダを指定する。
5.文字が読みにくければ、GoldenDict font change to Sanskrit 2003.zipを実行する。
で大丈夫だと思います。
アンドロイドからは、
1.PlayStoreから、Color Dictionaryをインストールする。
2.上記のリンクから、辞書ファイル(Amara等)をひとつひとつ開けて、ファイル単位で全て選択し
自分の端末(電話機)にダウンロードする。
3.ファイルマネージャーから、Downloadのフォルダにある辞書ファイルを、Dictionaryフォルダーに移す。
これで完了。
4.オンラインのサンスクリット辞書
http://spokensanskrit.org/英語→サンスクリット&サンスクリット→英語
これは使い易いですし、エントリー数がとても充実しています。
5.サンスクリット語の辞書の引き方:
サンスクリット語から英語の辞書は、使い方をマスターするところから勉強になります。サンスクリット語の辞書では、名詞は原型、または第一格単数で活用された形、動詞は原型で記載されています。実際の文章では、動詞も名詞も原型ではなく、活用された形でしかお目にかからないので、活用された形から原型の形に戻すことの出来る程度の文法の知識がなければ、辞書を引くことも出来ません。
名詞の原型には、m.(男性) f.(女性) n.(中性)といった性の他に、a.(adjective, 形容詞)といって、修飾する名詞の性と同じ性をとる名詞、さらに ind.(不活用名詞)があり、それぞれの略語が辞書で使われています。
動詞の原型には、1A、5Pなどの記号が付けられています。最初の数字は、動詞の活用の仕方を分けた、1から10までのグループです。次のアルファベットは、P (parasmaipada), A (ātmanepada), U (ubhayapada) の3種類があります。それらを詳しく知りたい方は、私の文法書を参考にしてください。近い将来日本語でも書きます!
また、サンスクリット語のアルファベットの順番をしらなければ、探している言葉がどこにあるのかも分かりません。並び順は大体の以下のような順序です。अ आ इ ई उ ऊ ऋ ॠ ए ओ ऐ औ
क् ख् ग् घ् ङ् - च् छ् ज् झ् ञ् - ट् ठ् ड् ढ् ण् - त् थ् द् ध् न् - प् फ् ब् भ् म् - य् व् र् ल् - श् ष् स् ह्
トリッキーなのは、鼻音の子音(3種類のNとM)が、アヌスヴァラ(線の上の点で表される鼻音)で表されている点です。辞書はフォントが小さいので、鼻音の子音のすぐ後に別の子音が来て複合子音になっている場合、アヌスヴァラとして表記するけれども、辞書のエントリーの並びはアルファベット順になっているということです。
6.サンスクリット辞書の役割:
ヴェーダ、ヴェーダーンタ、プラーナ、マハーバーラタやラーマーヤナ等の叙事詩、天文学・占星術、アーユルヴェーダやガンダルヴァヴェーダなどのウパヴェーダ、サーヒッティヤと呼ばれる文学など、インドの伝統知識は、サンスクリット語の文献(シャーストラ)という形で受け継がれています。伝統知識と呼ばれるがゆえに、伝統を受け継いでいる先生から直接学ぶことが絶対条件です。
自分で文献を買って、辞書を引きながら読んで理解したつもりになっても、その知識を得たとは、伝統では受け入れられません。
それぞれの専門知識のエッセンスは、先生と生徒の間の言語コミュニケーションがうまくいけば、サンスクリット語をあまり使わなかったとしても、伝えることはできるかもしれません。
しかし、サンスクリットの文献を、原文を使って勉強する場合は、その専門知識のみならず、サンスクリット文法の教養も持ち合わせている、ちゃんとした先生について勉強すべきです。
最近では、インドの伝統知識を教えるインド人の先生でも、サンスクリット語の教養が無いのに、サンスクリットの原文を使って教えることが多いようです。
インド人は「自分の地元の言語とサンスクリット語は似ているから」という理由で、サンスクリット語を「知っているつもり」になっている人が多いです。本当は知らなくても、自分が知らないことを知らずに、「もう知っている」と言ってしまえば、もうその人に学ぶ能力はありません。
インドの伝統知識を教えているインド人先生にこそ、サンスクリット語文法をきっちり学んで欲しい、というのが私の切実な願いです。
また逆に、文法を知っていれば、サンスクリットの文献を自分で読んで理解できる、というものでもありません。これも、伝統を知らない人は、知らないことを知らないので、何を言っても無駄ですが。。。
繰り返しますが、文献を読む場合は、単語の意味、文章の意味、全体の意味は、先生から教えてもらうべきで、自分で勝手に辞書を引きながら、、はあり得ません。先生と生徒の間でのコミュニケーションの共通インフラとして、サンスクリットの文法があるべきです。そこでのサンスクリット語の辞書の役割は、主に文法の勉強をする上で、単語のざっくりした意味や属性を調べるためにあります。
関連記事:
サンスクリット語の入力について
サンスクリット語の表記について