ラベル ナヴァラートリー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ナヴァラートリー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2015年10月20日火曜日

69.ラクシュミー(लक्ष्मीः [lakṣmīḥ])ナヴァ・ラートリー・スペシャル 女神の名前シリーズ:3

 लक्ष्मीः
[lakṣmīḥ]


1.ヴィシュヌの伴侶、ラクシュミー


2.努力する人に恩恵を与えるもの



あらゆる形の富の象徴


ラクシュミーは、あらゆる形の富の象徴です。

金銀財産はもちろん、権力、勝利、家族や食糧といった、

人間が持てる豊かさの全ては、ラクシュミーの表れです。

ケララ人のスワミ曰く、

ケララ州では、どんな家庭にでも、家の中に

「この家族は、ラクシュミーの恩恵によって成り立っている」

と書いたお札を奉っているそうです。

酔っ払って、「この家はな~誰のおかげでな~」と説教する&されるよりも、

より視野が宇宙に向けて広く、 客観的で謙虚な姿勢ですね。


アシュタ・ラクシュミー


ラクシュミーの八つの姿を合わせて、

アシュタ(8)・ラクシュミーと呼びます。


ダナ(財産)・ラクシュミー、

サンターナ(子孫繁栄)・ラクシュミー

ジャヤ(勝利)・ラクシュミー

ダーンニャ(穀物)・ラクシュミー

アイシュヴァリヤ(統治力)・ラクシュミー

ヴィーリャ(力)・ラクシュミー

ガジャ(象)・ラクシュミー

など、いろいろあって、何が8なのか、特に決まっていないみたいです。

豊かさを表すものなら何でもラクシュミーってことなのです。


1.ヴィシュヌの伴侶


विष्णोःपत्न्याम् अमरः

シヴァの伴侶はパールヴァティー、

ブランマージーの伴侶はサラッスヴァティー、

ヴィシュヌの伴侶は、ラクシュミーです。



ラクシュミージーは、手に蓮の花「パッドマ(पद्मम् [padmam])」を

持っている姿で描かれることが多いので、

「蓮の花を持つ者(女性)」という意味の

「パッドミニー(पद्मिनी [padminī])」もしくは

「パッドマヴァティー(पद्मवती [padmavatī])」

という名前で呼ばれます。

「パッドマ(पद्मम् [padmam])」に「~を持つ者」という意味の

「イン(इन् [in])」もしくは「マット(मत् [mat])」という接尾語を付けると、

「パッドミン(पद्मिन् [padmin])」「パッドマヴァット(पद्मवत् [padmavat])」

となります。

「ヨーガ」が「ヨーギン」に、「バガ」が「バガヴァット」になるのと、

全く同じ要領です。

そして、それらを女性形にしたければ、女性形の接尾語「イー」を付ければよいだけ。

それぞれ「パッドミニー」、「パッドマヴァティー」に、そして

「ヨーギニー(योगिनी [yoginī])」「バガヴァティー(भगवती [bhagavatī])」

となるわけです。


2.ラクシュミーの文法的語源


「印をつける、定義する、見つける」といった意味を持つ、

「ラクシュ(लक्ष् [lakṣ])」という動詞の原型に、

「ミー(मी [mī])」という、動作の主格を表す接尾語を付けて、


「ラクシュミー(लक्ष्मी [lakṣmī])」 となります。

これで、「見る人」となるわけですね。


「神様がこっちを見てくれる」ってどういう意味で取ればよい?



ヒンドゥーでは、「神様がこっちを見てくれる」、というのは、

「贔屓にしてもらえる=思い通りに事を運んでくれる=幸運を与えてくれる」

という意味として捉えられます。

ラクシュミーの御眼鏡に適うのは、どんな人?

लक्षयति पश्यति उद्योगिनमिति।
lakṣayati paśyati udyoginamiti|

「努力する人を見るもの、ラクシュミー」 という定義があります。

努力と運(ダイヴァ)は、車輪に例えられます。

「右側だけでも、左側だけでも駄目で、

両方無いと前に進めない」、という意味です。


ラクシュミーの活用


「ラクシュミー」は名詞の原型です。

「イー」で終わる女性名詞ですが、活用するときは注意が必要です。

上でも見たように、「ラクシュミー」の「イー」 は、

動作の主格を表す接尾語であって、

女性形を作るために足される接尾語では在りません。

(カーリーを参照のこと)

女性形の単語を作るための「イー」という接尾語で終わる単語は、

第一格・単数においては、「ナディー」と、名詞の原型と同じ形になりますが、

「ラクシュミー」の場合は、「ラクシュミーヒ」と、最後にヴィサルガが付くのです。

第一格・単数以外の形は、「ナディー」「ラクシュミー」とも、全て同じです。

なぜそんなことが起きるのかと言いますとね、

第一格・単数を表す接尾語は「S」 の音であり、

ヴィサルガの元となります。

女性形の単語を作るための「イー」という接尾語で終わる単語の場合、

その「S 」が落ちてしまいます。

それで、「ナディー(Sが落ちてヴィサルガが聞こえない)」となるわけです。

しかし、「ラクシュミー」の「イー」は、女性形の接尾語ではないので、

「S」 が落ちず、「ラクシュミーヒ」となるわけですな。

同じような単語は、ラクシュミーと同じ意味の「シュリー(श्रीः [śrīḥ])」や、

知能・知性といった意味の「ディー(धीः [dhīḥ])」などがあります。

文法が好きな方は、このシュローカを覚えると良いでしょう。

अवीतन्त्रीतरीलक्ष्मीधीह्रीश्रीणामुणादितः ।
अपि स्त्रीलिङ्गवृत्तीनां सोर्लोपो न कदाचन ॥
(これら7つの女性形の単語は、उणादि-प्रत्ययで終わっているので、
सुँ-लोपが起きません、という意味です。)


----------------------------------------
今日のシュローカ
या देवी सर्वभूतेषु लक्ष्मीरूपेण संस्थिता ।
yā devī sarvabhūteṣu lakṣmīrūpeṇa saṃsthitā |
नमस्तस्यै नमस्तस्यै नमस्तस्यै नमो नमः ॥
namastasyai namastasyai namastasyai namo namaḥ ||

この宇宙の全てのものの中で、ラクシュミー(富、豊かさ)という形で存在する、

そのデーヴィー(女神)へ、私の感謝と尊敬の念を表します。
----------------------------------------



<< 目次へ戻る <<



http://sanskrit-vocabulary.blogspot.com/2015/10/kali.html67.カーリー(काली [kālī]) 
ナヴァ・ラートリー・スペシャル 女神の名前シリーズ:1








http://sanskrit-vocabulary.blogspot.in/2015/10/durga.html


ナヴァ・ラートリー・スペシャル 女神の名前シリーズ:2  ドゥルガー(दुर्गा [durgā])

2015年10月19日月曜日

68.ドゥルガー(दुर्गा [durgā])ナヴァ・ラートリー・スペシャル 女神の名前シリーズ:2

दुर्गा 
[durgā]

1.ドゥルガー女神、創造と破壊の力(シャクティ)


2.理解されにくいもの



まず一つ目の意味から。


1.ドゥルガー女神、創造と破壊の力(シャクティ)


昨日のカーリーと同じように、創造と破壊を象徴する女神です。

カーリーはその名の通り、青黒い色で描かれていますが、

ドゥルガーは白くて、ライオンに乗っています。

マヒシャースラ・マルディニーとしても知られています。

その名の通り、マヒシャースラという魔物を殺したからことから由来している名前です。


アイ ギリナンディニ ナンディタメーディニ ヴィシュヴァヴィノーディニ ナンディヌテ~~

ギリヴァラヴィンディヤシローディニヴァーシニ ヴィシュヌヴィラーシニ ジシュヌヌテ~

私の好きな、『マヒシャースラ・マルディニー・ストートラム』です。

一見難しそうだけど、一度口に出すと、スラスラ出てきて、止まらない。しかも長い。

いかにもシャクティ!っという感じで力の湧き出るストートラムです。

バガヴァティ へー シティカンタクトゥンビニ ブーリクトゥンビニ ブーリクリテ~~

ジャヤ ジャヤ へー マヒシャースラマルディニ ランミャカパルティニ シャイラステ~

ここまでで1つのシュローカ。これが20番まで続きます。


なぜ武器を持った姿で描かれているのか


ドゥルガーはもちろん、カーリーも、ラーマも、ヴィシュヌも皆、

武器を持った姿で描かれています。

「守ってあげる準備はいつでも出来てるよ!」という意味です。

頼りにしたいから祈っている訳です。

何をどうもってして、頼りになるのか、本当のところを考え出したとき、

それに答えるのがヴェーダーンタです。

そして、二つ目の意味。


2.理解されにくいもの


दुर्दुःखेन गम्यते प्राप्यते
[durduḥkhena gamyate prāpyate]


「ドゥル(दुर् [dur])」=難しい

「ガム(गम् [gam])」は「行く」以外にも「理解する」という意味でも使われます。

「ガム(गम् [gam])理解」+「ダ(ड [ḍa])~されるもの」

この「ダ(ड [ḍa])」は、「ड् [ḍ]」の部分が取扱説明書で、

「अ [a]」の部分が中身です。

中身である「अ [a]」をどうやって取り扱うべきか、「ड् [ḍ]」が教えているのです。

「ड् [ḍ]」が教えるメッセージは、、

「前にある言葉の中の、最後の母音から始まる音を全て消して下さい」

(文法が好きな人の為に:डित्त्वसामर्थ्यादभस्यापि टेर्लोपः । という有名なपरिभाषाです。)

ということは、「गम् [gam]」の「am」の部分を消してしまうということですね。

そうすると、「ग् [g]」+「अ [a]」=「ガ(ग [ga])」だけになります。

女性名詞なので、女性接尾語「アー(आ [ā])」を付けて、

「ガー(गा [gā])」ですね。

「अ [a]」+「आ [ā]」=「アー(आ [ā])」、ディールガ・サンディです。

そこに、「ドゥル(दुर् [dur])」を付けて、

「ドゥルガー(दुर् [dur])」、理解し難いもの(女性)となるわけです。



どうしてドゥルガーは理解し難いのか?



ドゥルガー・デーヴィー(女神)は、シヴァ(イーシュヴァラ)と一心同体です。

離れて存在は出来ません。

アルダ・ナーリーシュワラの姿は、それを理解しやすい形ですね。


アルダ(半分)・ナーリー(女性)・イーシュヴァラなのです。

जगतः पितरौ वन्दे पारिवतीपरमेश्वरौ ।
jagataḥ pitarau vande pārivatīparameśvarau |

これは、カーリダーサ(昨日見ましたね)のラグ・ヴァムシャの

有名な、最初の祈りのシュローカです。

私が教えている3年コースのサンスクリット語のクラスでも、

毎日皆で唱えています。

「ジャガット(この宇宙の全て)の父母である、

パールヴァティーとパラメーシュヴァラに、

尊敬の念を表します。」

イーシュヴァラは、シャクティと、不離一体なのです。

だからこそ、その本質はひとつ。アドヴァイタです。


ひとつしか無いのだから、しかもそれはあなたでしかあり得ないのだから、

これほど分かりやすい事は無いのに!と思うのですが、

「ドゥルガー(理解され難いもの)」なのです。


理解に必要なもの



「理解」というからには、マインド(心、頭脳)が必要です。

マインドが準備されていなければ、理解は出来ません。

掛け算をまだ習っていないマインドが、

「8X9=72」を理解できないのと同じです。


ヴェーダーンタの「イーシュヴァラはあなたです」のヴィジョンも、

準備の出来ていない心=人間として成熟していない心

では理解出来ません。


それゆえに、こんなに明解な真実も、

「そういう意見って面白いよね。分かる分かる!

でも僕は違うと思うけど。」で片付けられてしまうのです。


心の準備、つまり人間として成熟した心とは、

出来るだけ短い言葉で言うと、客観的で、コンパッションのある心です。

当たり前と言えば、当たり前のことですが、

客観性やコンパッションというものは、

それの価値を充分理解し、意識して培っていくものです。


そして、そんな人間として成熟した心は、

自分のすべきこと「スヴァダルマ(स्वधर्मः [svadharmaḥ])」

に徹した生き方でしか得られません。


何が人間として成熟した心なのか?


上で示したように、プラマーナのはっきりしているインドでは、

人間としての成熟とはなにかも、はっきり定義され、詳しく説明されています。


一方、プラマーナの無い国、日本では、それははっきりしていませんね。

何でも「個人の問題」で片付けられて、さまよい続けています。

もちろん個人差はありますが、

日本人ほど、全体的にダルマのレベルが高い国も珍しいのに、

「何がダルマか」というのを、はっきりしたがらずに、

「個人」「感覚」「好きなことを!」という傾向が強く、

せっかく真面目に生きているのに、方向性が与えられていないのは、

インドから見ていて面白いです。っていうか、もったいない!ですね。


インドは元祖「ダルマ」の国で、

揺れ動かない普遍的な「成熟した心」の価値感が、

何千年と伝えられている国なのにも関らず、

全体的に「君たち自由過ぎるよ~!!」のように感じることが多いです。


どちらにせよ、ウパニシャッドでもギーターでも、

アドヴァイタは、「理解され難いものである」と何度も言われています。

宇宙の創造がそういう風に出来ているのですね。


ハッピー・ナヴァラートリー!

Medhaみちかの関連サイト

人気の投稿(過去30日間)

【新刊のお知らせ】
ヨガクラスの座学や、チャンティングのクラス、
サンスクリット語入門のクラスの教材として活用してください。
 

 すぐ読み書きできるようになる
サンスクリット語 デーヴァナーガリー文字 
練習帳 & 問題集
 
 わかりやすいサンスクリット語の正しい発音と表記
のメソッドに沿った、全ての文字の練習帳と、 
早く読み書きできるようになるための問題集です。

 
 初心者にはわかりづらい、連続した子音文字について、
よく見かけられるもの、そして応用の利くものを集め、
豊富な例と共に紹介しています。
お祈りの句の書き写しの練習も紹介しています。