バガヴァッド・ギーターの冒頭のシュローカにある言葉です。
धर्मक्षेत्रे कुरुक्षेत्रे समवेता युयुत्सवः ।
मामकाः पाण्डवाश्चैव किमकुर्वत सञ्जय ॥ 1.1॥
dharmakṣetre kurukṣetre samavetā yuyutsavaḥ |
māmakāḥ pāṇḍavāścaiva kimakurvata sañjaya || 1.1||
毎朝のクラスにて、一語一語の詳しい伝統に沿った意味の展開を見ているところです。
この「ユユ」 という重なった音は、
「~したいと願望する」という意味を持つ動詞の特徴です。
ムムクシュ(मुमुक्षु [mumukṣu]、自由になりたい人)も同様です。
この言葉は、
戦う + ~したいと願望する + ~する人
युध् [yudh] + स [sa] + उ [u]
という、みっつの要素から出来ています。
以下で詳しく説明しますね。
ブラジルなど南米で良く知られている「柔術(jiujitsuと発音される)」
は、サンスクリット語の「ユユッツ(yuyutsuḥ)」から来た!
と言う人もいますが、それは違うような気がするなぁ。
ちなみに、上のギーターのシュローカでは複数形で使われています。
u で終わる男性形のプラーティパディカ(名詞の原形)なので、
第1格複数(1/3)だと、u の部分が avaḥ になりますね。
言葉の成り立ち
上にも述べたとおり、ユユッツ(युयुत्सुः [yuyutsuḥ])という言葉は、
युध् [yudh] という、「戦う」という意味の動詞の原形に、
सन् [san] という、「~したいと願望する」という意味の接尾語を付加し、
さらに、उ [u] という、「(その人のあり方として、常に、うまく)~する人」という意味の接尾語を付加して出来た言葉です。
サナンタ・ダートゥ
सन् [san] という接尾語は、動詞の原形の後ろに付加して、
「~したいと願望する」という意味の新しい動詞の原形を造るために使われます。
この接尾語が来ると、動詞の原形の音節は二回繰り返されることになります。
この、音節を二度繰り返すことを、ドヴィットヴァ(द्वित्व [dvitva])と呼びます。
また、繰り返して出来た二つの音節の、最初の音節を、アッビャーサ(अभ्यास [abhyāsa])と呼びます。
この接尾語で終わっている動詞の原形を、サナンタ・ダートゥと呼びます。
サナンタとは、san + anta(終わり)、ということですね。
(8.3.32にてnがもういっこ増えてसन्नन्त となります。)
ダートゥとは、動詞の原形のことです。
サンスクリット語には、動詞の原形には2種類あります。
元素のように、最初からある2千ほどの動詞の原形と、
サナンタ・ダートゥのように、他の言葉から派生して出来た動詞の原形です。
ちなみに、सन् [san] の最後のnは、音の抑揚の為にあります。
言葉を造るプロセス
yudh + sa
動詞の原形の後ろに、「~したいと願望する」という意味において、
接尾語 sa を付加します。
yudh yudh + sa
san で終わっている言葉の最初の音節は、二度繰り返されます。
yu yudh + sa
繰り返された最初の音節の、初めにある子音だけを残して、後ろのdhは消えます。
yu yut + sa
無声音 s の前にある有声音 dh は、無息音・無声音 t に替わります。
これで、yuyutsa という新しい動詞が出来ました。
yuyutsa + u
新しい動詞の原形、今度は「~する人」という意味の u という接尾語を付加します。
yuyuts + u
接尾語の直前の a が消えます。
yuyutsu
新しい名詞の原形の出来上がり。
スートラを使った造語プロセス
युध् + सन् 3.1.7 धातोः कर्मणः समानकर्तृकादिच्छायां वा । ~ सन् धातोः प्रत्ययः परश्च
सन् is किद्वत् by 1.2.10 हलन्ताच्च । ~ इकः झलः सन्, thus no गुण takes place on युध् by 1.1.5 क्क्ङिति च । ~ गुणवृद्धी न
युध् युध् + स 6.1.9 सन्यङोः । ~ एकाचः द्वे प्रथमस्य धातोः अनभ्यासस्य
यु युध् + स 7.4.60 हलादिः शेषः । ~ अभ्यासस्य
यु युत् + स 8.4.55 खरि च । ~ झलाम् चर्
युयुत्स is qualified to be धातु by 3.1.32 सनाद्यन्ता धातवः।
युयुत्स + उ 3.2.168 सनाशंसभिक्ष उः । ~ तच्छीलतद्धर्मतत्साधुकारिषु धातोः प्रत्ययः परः
युयुत्स् + उ 6.4.48 अतो लोपः । ~ आर्धधातुके
युयुत्सु is qualified to be प्रातिपदिक by 1.2.46 कृत्तद्धितसमासाश्च । ~ प्रातिपदिकम्
こういうのを一緒に楽しめる人を日本で増やして行きたいです。。
関連記事:
<< サンスクリット語一覧(日本語のアイウエオ順) <<