ज्ञानम्
[jñānam]
<意味1> 知る手段 (करणे व्युत्पत्तिः)
[jñānam]
<意味1> 知る手段 (करणे व्युत्पत्तिः)
サンスクリットの言葉は派生の仕方で意味が変わる
「ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])」には、下に述べる文法的な理由から、
様々な意味を持たせることが出来ます。
今回は、バガヴァッド・ギーター13章11の中で、
「एतज्ज्ञानमिति प्रोक्तम् [etajjñānamiti proktam] ...」と言われている、
「ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])」について取り上げます。
バガヴァッド・ギーター13章7~11のシュローカで教えられている、 ウパニシャッドの理解に先立つ「心の成熟」について、 じっくり解き明かした一連のレクチャーです。 |
毎週木曜日に開催しているThe Value of Values のクラスのトピックでであり、
重要なポイントなので、今回の言葉にしました。
ニャーナの語源
「知る」という意味の動詞の原型「ニャー(ज्ञा [jñā])」に、
接尾語「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」を付加します。
「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」は「アナ(अन [ana])」に形を変えます。
これは突然変異のようなもので、理屈はありません。
「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」は「アナ(अन [ana])」なる。
そして、「ニャー(ज्ञा [jñā])」+「アナ(अन [ana])」で、
「ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])」になる訳です。
サンスクリット語の中で最もよく見かけられる接尾語、「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」
接尾語「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」は、動詞を名詞に変化させる接尾語です。
サンスクリット語の単語の中で最頻出と言ってよいくらい、
「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」つまり「アナ(अन [ana])」で終わる言葉は沢山あります。
ヨガのポーズとして知られる「アーサナ(आसनम् [āsanam])」、
座布団や座る場所も、アーサナと言いますね。
瞑想は「ディヤーナ(ध्यानम् [dhānam])」、
達成手段は「サーダナ(साधनम् [sādhanam])」、
見ることは「ダルシャナ(दर्शनम् [darśanam])」、
結びつけるものは「バンダナ(बन्धनम् [bandhanam])」ですね。
結ぶバンダナと、ムリッティユンジャヤ・マントラに出てくるバンダナは、
同じ言葉ですね。
どれも全部、「アナ」 で終わっていますね。
さまざまな意味を持つ、接尾語「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」
接尾語「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」の意味には、何でもありと言っていいくらい、
沢山あります。
主に使われるのが、「バーヴェー(भावे [bhāve])」と呼ばれる、
動詞そのものを示す意味で、「~すること」という意味の名詞を造ります。
例えば、「ニャー(ज्ञा [jñā])」の後ろに、
「バーヴェー(भावे [bhāve])」の意味において「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」を足して出来た言葉、
「ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])」 は、「知ること」という意味の単語になります。
また、「カルマニ(कर्मणि [karmaṇi])」と呼ばれる、
動詞の対象物や目的語を示す意味でも「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」は使われます。
この場合の 「ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])」は、「知る対象、知識」という意味になります。
同じ形でも、違う意味になるのです。
そして、「カラネー(करणे [karaṇe])」 と呼ばれる、
動詞の手段、方法を示す意味で「リュット(ल्युट् [lyuṭ])」を使えば、
同じ 「ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])」でも、「知る手段、知る為に必要な道具」となります。
バガヴァッド・ギーター13章11で言われている 「ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])」は、
この「カラネー(करणे [karaṇe])」という意味で取られます。
ウパニシャッドの知識を得るために必要な、心のあり方です。
それはつまり、人間として成長をした心のあり方です。
結局人生のゴールというのは何なのか、を明らかにし、
その達成に必要な、成長した心のあり方とは何か、を明らかにすることによって、
成長した心のあり方という価値(value)に、価値(value)を見出す必要があります。
それらは、仕事や子育てといった、その人それぞれに与えられた
家庭や社会の責任と義務を果たすことによって、意識して培かっていくものなのです。
次回は、「知る主体」「知る対象物」「知る手段」といった、
ヴェーダーンタのディスカッションに必要不可欠な、
トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]) という概念について、文法的な説明しますね。
発音については、こちらもご参照ください。
ジュニャーナ?ギャーナ?ニャーナ?ज्ञान [jñāna] の発音はどうするべきか?
73.ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam]) - ちなみに発音について
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