त्रिपुटी
[tripuṭī]
カタカナで書くと、「幸せ、満足」という意味の「トリプティ(तृप्तिः [tṛptiḥ])」に見えますね。
しかし今回は「3つのモノの集まり」という意味の「トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]」です。
ローマ字やデーヴァナーガリーで書くと全く違うのに、
カタカナで書くと同じに見えてしまいます。
それゆえに、サンスクリット語をカタカナ表記をする時はいつも、なんとも心苦しくなり、
横にデーヴァナーガリーとローマ字表記をせっせと付けているのです。
日本語の仮名は、子音と母音が既に1つになっていて、
子音だけで独立して表記は出来ません。
さらに、日本語にある音の種類は、他のどの言語に比べても、
かなり少ない方です。
母音は5つだけ。
子音は、14??
サ行の中にでも、「S」と「SH」が混じっているし、
ワ行はアとしか合わさらないので、どう数えていいのかも曖昧です。
日本語は、音声学的にかなりシンプルな言語です。
サンスクリット語は、母音が9、子音は33、
さらに日本語には殆んど無い複合子音がいっぱいあります。
そんな訳で、サンスクリット語はもとより、どんな外国語でも、
カタカナ表記してしまうと、本来の発音とはほど遠くなってしまうことは多々あります。
日本語は、発音の種類がシンプルなゆえに、会話は学び易いけど、
書き言葉となると、世界一難しい言語かも知れません。
音の少なさゆえに、同音異義語がとてつもなく多く、
漢字表記に大きく頼っているので、学習は大変です。
しかし一方で、使用する文字の種類の多いことから、
デーヴァナーガリー文字など、新しいアルファベットを学習するスピードは、
西洋人に比べて、ぐんと速いのも、日本人の特徴です。
というわけで、何が言いたかったかというと、
そんなに難しいことではないけど、効果は絶大なので、
カタカナ表記の横に添えてある、ローマ字やデーヴァナーガリーにも目を通すくせをつければ、
思っている以上に早く、正しい発音の表記法が習得出来ますよ!
ということでした。
ローマ字は、ヘボン式ローマ字とほぼ同じです。
ちなみに、ヘボンは、ヘップバーンです。ヘボンの方が発音近い?
何でこんな話になったのかというと、
「トリプティ(तृप्तिः [tṛptiḥ])」と
「トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]」の違いですね。
「トリ(त्रि [tri])」とは、英語のthreeと一緒ですね。3です。
「プタ(पुट [puṭa])」は「~種類」という意味です。
それらが複合語として合わさって「トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]」です。
何かを説明するときに、その主要な構成要素が3つの場合、
「3つ揃え」として紹介するのに使われます。
今回なぜ「トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]」を取り上げたかというと、
「The Value of the Values」の本の中でよく登場するからです。
文法的に説明しなければ、すっきり理解出来ないので、
今回のトピックとして取り上げました。
カタカナよりは、ローマ字やデーヴァナーガリーを見たほうが、
分かり易いかもしれません。
「ニャー(ज्ञा [jñā])= 知る」のトリプティー
1.「ニャーター(ज्ञाता [jñātā])」(知る人、知る主体)
2.「ニェーヤム(ज्ञेयम् [jñeyam])」(知られる対象)
「プラマー(प्र + मा [pra + mā])= 知る」のトリプティー
1.「プラマーター(प्रमाता [pramātā])」(知る人、知る主体)
2.「プラメーヤム(प्रमेयम् [prameyam])」(知られる対象)
それぞれの言葉を良くよく観察してみてください。
前の部分は、動詞の原型(ニャーとかプラマーとか)です。
それぞれのトリプティーに共通にありますね。
一方、後ろの部分(色つき)が、接尾語と呼ばれる部分(ターとか)で、
言葉全体が、動詞の主語なのか、目的語なのか、手段なのか、
はたまた動詞で示されている行為そのものなのかを表しています。
これは、「知る」という認識のプロセスにおいて、
最低必要な要素を表しています。
「知る人」、「知られる対象」、「知る手段」、
これらは全て、当たり前の事ばかりですが、
これらをきっちりした言葉できっちり把握する必要があります。
「知る人」という主体が無ければ、始まらない。
そして、知るからには、「知られる対象」がなければ話にならない。
この世界を体験している私にとって、全宇宙とはこの2つだけです。
いろいろあるように見えるけれども、煮詰めると、
「私」という認識と、「私以外」という対象物の認識しかありません。
「知る人」と「知られる対象」があっても、
「知る手段」が適当でなければ、知ることは出来ません。
さらに、「知られる対象」が「知る手段」によって、
知りうる範囲になければ、それを知ることが出来ない。
サンスクリット語の学習は、ボンヤリ認識していた世界や宇宙を、
構造的にすっきり理論的に把握するのを手伝ってくれます。
五感、推論、言葉などの「知る手段」を使っても、最終的に「心」という
「知る手段」が適当な状態でなければ、うまく知る事はできない。
「知るべき対象」の性質によって、適当な「知る手段」を使わなければ、
知ったことにはならない。
「知る主体」が自身の本質を知ろうとするとき、その「知るべき対象」とは?
その場合の「知る手段」は?
それが全てはヴェーダーンタにつながるのです。
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53.プラマーナ(प्रमाणम् [pramāṇam])- 知る手段、情報源
<< 前回 71.ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])- (意味1:) 知る手段 <<
= 文法に興味がある人へ =
ज्ञा + तृच् 3.1.133 ण्वुल्तृचौ । 動詞の主体を表す接尾語तृच्が付与される
ज्ञा + तृ अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
ज्ञातृ
ज्ञा + यत् 3.1.97 अचो यत् । 動詞の目的語を表す接尾語यत्が、
母音で終わる動詞の原型に付与される
ज्ञा + य अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
ज्ञी + य 6.4.65 ईद्यति । यत्の前の長いआはईに変わる
ज्ञे + य 7.3.84 सार्वधातुकार्धधातुकयोः । グナが起きる
[tripuṭī]
feminine - 主体・客体・その手段といった、3つ組
カタカナで書くと、「幸せ、満足」という意味の「トリプティ(तृप्तिः [tṛptiḥ])」に見えますね。
しかし今回は「3つのモノの集まり」という意味の「トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]」です。
ローマ字やデーヴァナーガリーで書くと全く違うのに、
カタカナで書くと同じに見えてしまいます。
それゆえに、サンスクリット語をカタカナ表記をする時はいつも、なんとも心苦しくなり、
横にデーヴァナーガリーとローマ字表記をせっせと付けているのです。
カタカナ表記の限界
日本語の仮名は、子音と母音が既に1つになっていて、
子音だけで独立して表記は出来ません。
さらに、日本語にある音の種類は、他のどの言語に比べても、
かなり少ない方です。
母音は5つだけ。
子音は、14??
サ行の中にでも、「S」と「SH」が混じっているし、
ワ行はアとしか合わさらないので、どう数えていいのかも曖昧です。
日本語は、音声学的にかなりシンプルな言語です。
サンスクリット語は、母音が9、子音は33、
さらに日本語には殆んど無い複合子音がいっぱいあります。
そんな訳で、サンスクリット語はもとより、どんな外国語でも、
カタカナ表記してしまうと、本来の発音とはほど遠くなってしまうことは多々あります。
文字習得は、日本人にとっては難しいことではない
日本語は、発音の種類がシンプルなゆえに、会話は学び易いけど、
書き言葉となると、世界一難しい言語かも知れません。
音の少なさゆえに、同音異義語がとてつもなく多く、
漢字表記に大きく頼っているので、学習は大変です。
しかし一方で、使用する文字の種類の多いことから、
デーヴァナーガリー文字など、新しいアルファベットを学習するスピードは、
西洋人に比べて、ぐんと速いのも、日本人の特徴です。
というわけで、何が言いたかったかというと、
そんなに難しいことではないけど、効果は絶大なので、
カタカナ表記の横に添えてある、ローマ字やデーヴァナーガリーにも目を通すくせをつければ、
思っている以上に早く、正しい発音の表記法が習得出来ますよ!
ということでした。
ローマ字は、ヘボン式ローマ字とほぼ同じです。
ちなみに、ヘボンは、ヘップバーンです。ヘボンの方が発音近い?
何でこんな話になったのかというと、
「トリプティ(तृप्तिः [tṛptiḥ])」と
「トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]」の違いですね。
「トリ(त्रि [tri])」とは、英語のthreeと一緒ですね。3です。
「プタ(पुट [puṭa])」は「~種類」という意味です。
それらが複合語として合わさって「トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]」です。
何かを説明するときに、その主要な構成要素が3つの場合、
「3つ揃え」として紹介するのに使われます。
「知る」という認識行動に関わるトリプティー
今回なぜ「トリプティー(त्रिपुटी [tripuṭī]」を取り上げたかというと、
「The Value of the Values」の本の中でよく登場するからです。
文法的に説明しなければ、すっきり理解出来ないので、
今回のトピックとして取り上げました。
カタカナよりは、ローマ字やデーヴァナーガリーを見たほうが、
分かり易いかもしれません。
「ニャー(ज्ञा [jñā])= 知る」のトリプティー
1.「ニャーター(ज्ञाता [jñātā])」(知る人、知る主体)
2.「ニェーヤム(ज्ञेयम् [jñeyam])」(知られる対象)
3.「ニャーナム(ज्ञानम् [jñānam])」(知る手段、認識)
「プラマー(प्र + मा [pra + mā])= 知る」のトリプティー
2.「プラメーヤム(प्रमेयम् [prameyam])」(知られる対象)
3.「プラマーナム(प्रमानम् [pramānam])」(知る手段、認識)
それぞれの言葉を良くよく観察してみてください。
前の部分は、動詞の原型(ニャーとかプラマーとか)です。
それぞれのトリプティーに共通にありますね。
一方、後ろの部分(色つき)が、接尾語と呼ばれる部分(ターとか)で、
言葉全体が、動詞の主語なのか、目的語なのか、手段なのか、
はたまた動詞で示されている行為そのものなのかを表しています。
これは、「知る」という認識のプロセスにおいて、
最低必要な要素を表しています。
3つに分けて説明する理由
「知る人」、「知られる対象」、「知る手段」、
これらは全て、当たり前の事ばかりですが、
これらをきっちりした言葉できっちり把握する必要があります。
「知る人」という主体が無ければ、始まらない。
そして、知るからには、「知られる対象」がなければ話にならない。
この世界を体験している私にとって、全宇宙とはこの2つだけです。
いろいろあるように見えるけれども、煮詰めると、
「私」という認識と、「私以外」という対象物の認識しかありません。
「知る人」と「知られる対象」があっても、
「知る手段」が適当でなければ、知ることは出来ません。
さらに、「知られる対象」が「知る手段」によって、
知りうる範囲になければ、それを知ることが出来ない。
サンスクリット語の学習は、ボンヤリ認識していた世界や宇宙を、
構造的にすっきり理論的に把握するのを手伝ってくれます。
五感、推論、言葉などの「知る手段」を使っても、最終的に「心」という
「知る手段」が適当な状態でなければ、うまく知る事はできない。
「知るべき対象」の性質によって、適当な「知る手段」を使わなければ、
知ったことにはならない。
「知る主体」が自身の本質を知ろうとするとき、その「知るべき対象」とは?
その場合の「知る手段」は?
それが全てはヴェーダーンタにつながるのです。
<< 目次へ戻る <<
53.プラマーナ(प्रमाणम् [pramāṇam])- 知る手段、情報源
<< 前回 71.ニャーナ(ज्ञानम् [jñānam])- (意味1:) 知る手段 <<
= 文法に興味がある人へ =
ज्ञा + तृच् 3.1.133 ण्वुल्तृचौ । 動詞の主体を表す接尾語तृच्が付与される
ज्ञा + तृ अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
ज्ञातृ
ज्ञाता, ज्ञातारौ, ज्ञातारः... 名詞の活用(男性形)
ज्ञा + यत् 3.1.97 अचो यत् । 動詞の目的語を表す接尾語यत्が、
母音で終わる動詞の原型に付与される
ज्ञा + य अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
ज्ञी + य 6.4.65 ईद्यति । यत्の前の長いआはईに変わる
ज्ञे + य 7.3.84 सार्वधातुकार्धधातुकयोः । グナが起きる
ज्ञेय
ज्ञेयम्, ज्ञेये, ज्ञेयानि... 名詞の活用(中性形)
ज्ञा + ल्युट् 3.3.117 करणाधिकरणयोश्च । 動詞の手段や場所を表す接尾語ल्युट्の付与
ज्ञा + यु अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
ज्ञा + यु अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
ज्ञा + अन 7.1.1 युवोरनाकौ । 接尾語のयुはअनに変わる
ज्ञान
ज्ञानम्, ज्ञाने, ज्ञानानि... 名詞の活用(中性形)
प्र + मा + तृच् 3.1.133 ण्वुल्तृचौ । 動詞の主体を表す接尾語तृच्が付与される
प्र + मा + तृ अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
प्रमातृ
प्र + मा + यत् 3.1.97 अचो यत् । 動詞の目的語を表す接尾語यत्が、
母音で終わる動詞の原型に付与される
प्र + मा + य अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
प्र + मी + य 6.4.65 ईद्यति । यत्の前の長いआはईに変わる
प्र + मे + य 7.3.84 सार्वधातुकार्धधातुकयोः । グナが起きる
प्र + मा + तृ अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
प्रमातृ
प्रमाता, प्रमातारौ, प्रमातारः... 名詞の活用(男性形)
प्र + मा + यत् 3.1.97 अचो यत् । 動詞の目的語を表す接尾語यत्が、
母音で終わる動詞の原型に付与される
प्र + मा + य अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
प्र + मी + य 6.4.65 ईद्यति । यत्の前の長いआはईに変わる
प्र + मे + य 7.3.84 सार्वधातुकार्धधातुकयोः । グナが起きる
प्रमेय
प्रमेम्, प्रमेये, प्रमेयानि... 名詞の活用(中性形)
प्र + मा + ल्युट् 3.3.117 करणाधिकरणयोश्च ।
प्र + मा + यु अनुबन्धलोपः 取扱説明書的な文字が取り除かれる
प्र + मा + अन 7.1.1 युवोरनाकौ । 接尾語のयुはअनに変わる
प्रमान
प्रमानम्, प्रमाने, प्रमानानि... 名詞の活用(中性形)