2014年6月10日火曜日

28.キールティ(कीर्तिः [kīrtiḥ])- 名声、有名であること

कीर्तिः

 [kīrtiḥ] 


feminine - 名声、有名であること




キールティの意味



「名声」とか「有名人」とか聞くと、

ハリウッドとか、芸能界とか、ビジネスや政治で成功した人とか、

いかにも俗世間的な感じがしますが、

ヴェーダーンタ・シャーストラで使われる場合は、

もちろん、もっと深い意味で使われます。


自分の能力は誰のもの?


名声を得る、ということは、何かの分野で成功した証です。

成功を収めるには、それなりの能力や資源が必要です。

ビル・ゲイツは、相当な働き者だろうし、頭もいいし、

鋭いビジネス感覚や先見の明を持っているはずです。

優れた人材や、時代の風潮にも恵まれていたでしょう。

その全ての能力や資源は、誰のものなのでしょうか?

「俺だよ!俺が人一倍頑張ったんだよ!」と言う権利はもちろんビル・ゲイツにありますが、

彼が頑張れるのも、その能力が彼に与えられていたからです。


自分の行動と能力に神を見る


ヒンドゥーの子供たちが、一般的に教わる毎日のお祈りの中に、

朝一番にまず自分の手のひらを見ながらするお祈りがあります。

कराग्रे वसते लक्ष्मीः [karāgre vasate lakṣmīḥ]
手の先にはラクシュミー(あらゆる富の女神)が住んでいる。

करमध्ये सरस्वती । [karamadhye sarasvatī |]
手の中程にはサラッスヴァティー(あらゆる知識の女神)が住んでいる。

करमूले तु गोविन्दः [karamūle tu govindaḥ]
手の付け根にはゴーヴィンダ(全ての現象に存在を与えている意識)が住んでいる。

प्रभाते करदर्शनम् ॥ [prabhāte karadarśanam ||]
朝に手を見ること。



どういう意味なんでしょうか?

手は、人間の行為の道具の象徴です。

ラクシュミーは全宇宙の富や資源の象徴です。

サラッスヴァティーは全宇宙の智恵。

毎朝、行為の象徴である自分手の中に彼女たちの存在を思い出し、

「私が仕事が出来るのは、彼女たちのパワーのおかげ。

私の行為のひとつひとつを可能にしているのは、彼女たちである資源と智恵。

私が今日一日の中でする仕事の中に、彼女たちの恵がありますように。」

と祈るのです。


手の付け根で彼女たちを支えている=存在を与えているのは、

ゴー(言葉によって)ヴィンダ(得られる)=クリシュナ。

ヴェーダーンタ・シャーストラ(文献)によって得られる知識についても、

毎朝ちゃんと思い出すのです。


イーシュワラを見せる仕掛けがいっぱい詰まったヒンドゥー生活様式


ヒンドゥーの生活文化には、朝起きてから寝るまで、

全てにイーシュワラを見出す為の仕掛けが、そこらじゅうに散りばめてあります。

最初は???と思わざるを得ない習慣だらけですが、

シャーストラを勉強すればするほど、そこに隠されている意味が見えてきます。

人間の傾向や心理までよく見透かした、とても深い仕掛けです。


「バガヴァーン」という時の6つのバガに、

この कीर्तिः [kīrtiḥ] 「キールティ(名声)」と同じ意味の 、

यशः [yaśaḥ]「ヤシャス(名声) 」が含まれています。

人が名声を得た時、成功を収めた時、

自分にばかりに意識が行ってしまって、大きなヴィジョンを逃さないように、

「名声とは、バガヴァーンのものなんですよ」と思い出させてくれているのです。


自分が持っている能力や資源を、バガヴァーンのものと見なし、

「私はそれらをうまく使うように管理を任されているだけ」

といった態度で仕事をする時、

その人には、リラックスした客観的姿勢が生まれ、

もっと大きな意味でのさらなる成功を収めやすくなるのです。


= कीर्तिः [kīrtiḥ] - キールティ が使われている文献 =

タイッティリーヤ・ウパニシャッド1章18節
कीर्तिः पृष्ठं गिरेरिव ।  [kīrtiḥ pṛṣṭhaṃ gireriva | ]

トリシャンクという名のリシ(聖者)が、ヴェーダーンタの知識を得たときの発言だとされる。

「私の名声は(kīrtiḥ )山の(gireḥ)頂上(pṛṣṭhaṃ )の様(iva )だ。」

つまり、知識を得た人、つまりジーヴァンムクティを讃える為の表現。

または、その人はイーシュワラであることから、無限の名声を持つという表現。






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サンスクリット語で「小さな虫」という意味です。
パンチャ・コーシャについても。




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シヴァとパールヴァティーの息子、ガネーシャの弟の
「クマール」くんのお話。