2015年3月8日日曜日

サンスクリットを習い始めた人に、どうか知って欲しいあれこれ

サンスクリットにちょっとでも興味のある人、

サンスクリットの表記(अ, इ, उ...)は難しいって思っている人、

表記法はマスターしたけど、その先が、、という人、

そして、サンスクリットを学び、教える全ての人、

何かの縁で、サンスクリットという高貴な言語に少しでも触れることが出来た人は皆、

高貴な運命に引き寄せられた、人類最上級の幸運の持ち主です。

そんな良縁を持って、これを読んでいる皆さんに伝えたい、

サンスクリットに関するあれこれをまとめました。


決まった表記法の無い言語、サンスクリット


びっくりするかもしれませんが、

サンスクリット語というものは、決まった表記法が無いのです。

なぜなのかというと、、、


サンスクリットは耳と口で伝えられている


ヴェーダを始め、ありとあらゆるサンスクリット語の文献は、

基本的には口伝です。

カルナパランパラー(耳から耳へ)とも言います。

だから、発声法が非常に重要です。

まず聞き取る耳を発達させる。

耳でキャッチ出来たことしか口で再現できませんから。

発音出来なくても、まず聞き取れる耳を養う。

それには、正しい発音で教えてくれる先生から、チャンティングのクラスを、

何年と言う単位で、訓練を積まなければなりません。

まぁ、それだけ気長にやればいいのです。

すぐに出来てしまってはつまらないでしょう。

聞き取れて、発音出来て、チャンティングの知識の受け渡しが完了するのです。

ゆえに、サンスクリットの発声学はとても洗練されています。


サンスクリットの発声学


これについては、サンスクリットの文法のクラスで教えていますが、

パーニニ勉強会のブログにものちのち、、、記事を載せますね。

少しでも勉強された方はご存知かもしれませんが、

とてもシステマティックで整然としていますが、

話し出すと長くなるんですね。。。



全ては丸暗記して記憶されるように出来ている。


サンスクリットの文献は、ヴェーダも、スムルティも、文法も、

そしてなんと辞書まで丸暗記して、後世に受け継がれてきました。

韻律も、スートラにして短くするのも、全て記憶し易いようにした工夫です。



ゆえに、文献の意味を正しく理解するには、それを紐解く伝統が必要


原本は丸暗記する。

丸暗記した後初めて、それを紐解いて、暗記した言葉の意味を教えるのです。

文献そのものと、紐解く技術を知っている人間(先生)がセットになって、

その文献が伝えるべき意味(ターッパリヤ)が、代々伝承されているのです。

知識の伝承の伝統を知らないなら、大学教授でも、自称マスターでも、

何も知らないのと同然だから、完全に無視されるべきである、と

シャンカラーチャーリヤは、ギーターのバーシャで一喝しています。

असम्प्रदायवित् सर्वशास्त्रविदपि मूर्खवदेवोपेक्षणियः ।
伝統を知らない者は、大学者であっても、愚か者として扱われるべきで、
相手にされるべきではない。


サンスクリット語表記の必要性


このように、口伝で継承されてきた知識ですが、

時代を経るにつれて、人間の記憶能力のみならず思考能力も低下の一方を辿り、

文献を書き留める必要が出てきました。

やしの葉(パーム・リーフ)に、もちろん手書きで文献が書き起こされ、

それをまた誰かが手書きで書き写し、代々インドの家庭で守られてきました。



失われ続ける文献と伝統


現代に近づくにつれ、インドの人々の生活スタイルや価値感は西洋化され、

昔は文献を丸暗記するのが義務だったけど、

そんなことに価値感を置けない時代になってきたのです。

パームリーフも、ムスリムたちに焼かれたり、

虫に食われたり、ヤギに食べられたり、、、

パームリーフをデジタル化して残し、

さらに、それを読み解くパンディット(伝統的学者)を養成する運動を、

近年にプージャスワミジが主宰して発足されました。


大量のパームリーフは、ムスリム支配とヒンドゥー自身の無関心によって失われましたが、

残されたパームリーフもその殆どが、

誰にも開かれることなく、埃をかぶって積み上げられたままになっているそうです。

時代の変化に付いて行く為に、ITに進んでお金儲けをするのに忙しく、

パームリーフなんかを読んでいる時間など無いのです。


西欧におけるインド研究の罪業


ここで言及しておきたいのは、西欧のインド研究の罪悪です。

インドの植民地化と同時期に、多くの西欧の学者のがインド文学を研究しました。

基本的にクリスチャンである彼らは、インドの知識の伝統の価値は理解出来ないどころか、

「幼稚で迷信的な偶像崇拝者ども」と見下した態度が、常に根底にありました。

それは、彼らの残した文献のいたるところに批判や侮蔑の表現として見られます。

彼らの罪業はここからです。

植民地支配と共に、巧みにインド人達に自分たちの文化に対して

劣等感を植えつけさせたのです。

このインド文化に浸透する西欧至上主義は、

インド文化を不当に侮辱するイメージを世界中に流し続け、

当のインド人の自尊心を破壊し、そしてインド文化の精神と伝承を破壊し続けているのです。

 
Invading the Sacred

著者の一人、クリシュナンジは私の同期生です。

英語が読める人には、一読一考の価値ありです。

Wikipediaのページ

Amazonアメリカのレヴューも参考になります。



Medha Michikaの世界: 
これからサンスクリットを学習する上で知っていた方がいいかもしれないこと。

もどうぞご参考までに。


話を戻しましょう。

サンスクリットの表記法


発音についてやたら細かい決まりがあるのがサンスクリット語ですが、

音の違いを正確に書き表すことが出来れば、

表記法は何でもいいのがサンスクリットなのです。

そういうわけなので、ローマ字表記でも、音が正確に示されてさえいれば、

全く問題ないのです。

ローマ字表記法にも、IASTや、HKなど、いくつかの方式があります。



インドでは、地域によって、その土地で使われている表記法が、

サンスクリット語の文献を書き写すのに使われています。

タミル・ナードゥ州では、グランタと呼ばれる表記法が使われています。

ケララではマレーやラムが、アンドラではテルグが、

カルナータカではカンナダが、、といった具合です。

しかし、マジョリティーは、、ヒンドゥー、マラティ、ネパーリーといった

北インド語圏で使われている、デーヴァーナーガリーという表記法です。

サンスクリット語の文献を本屋さんで探せば、

殆んどはデーヴァーナーガリーで書かれています。

サンスクリット語で何かを勉強するなら、

やはりデーヴァナーガリー表記法は避けて通れません。


デーヴァナーガリーの勉強法


ひらがなやカタカナ、さらに漢字を使いこなす日本人にとって、

たかだか40程度の文字の組み合わせからなるデーヴァナーガリーを習得することは、

そんなに難しいことではありません。

私自身は、デーヴァナーガリーの表を見ただけで充分でした。

あとは、自分でシュローカを書き移したり、チャンティングをしたり、

リシケシの街中の看板を読んだり、、、

サンスクリットに触れてすぐにダヤーナンダ・アシュラムで

ヴェーダーンタとチャンティング、サンスクリット文法の勉強を始めたので、

ごく自然に覚えました。


先にも書きましたが、お勧めの勉強法&練習法を紹介します。

1.好きなシュローカや文献を書き写す。

2.デーヴァナーガリーを見ながらチャンティングを学ぶ。

  読むのではなく、見ながら、というのが重要なポイントです。

3.デーヴァナーガリーが使われている北インドの街角の看板を読みまくる。

  書かれている内容は8割方英語なので、読んで意味が分かるし、
  独特のヒンディー訛りの英語がたまらなく面白くて笑えます。
  日本のカタカナ英語みたいに、ヒンディーのデーヴァナーガリー英語です。

4.人に教える。

  ある程度読み書き出来るようになれば、周りの人にシェアしてあげましょう。
  学ぶのにも根気が要りますが、教えるのにも根気や大きな優しさが必要なのですよ。

5.独りでも楽しみ、一緒に居て成長しあえる人達(サットサンガ)とも共に学ぶ。

  これが一番大事ですね。






>> よく使われるサンスクリット用語一覧 >>

ヨガやアーユルヴェーダでよく聞かれる
サンスクリットの単語の正しい意味を知りましょう。






サンスクリットを初めて勉強される方にお勧めの教材

自分の著書ですが、、、

サンスクリット表記法(Devanagari)練習帳

このブログで、それぞれのアルファベッドの例に使われている単語を、
ひとつひとつ説明しています。(単語一覧)

日本でも入手可能になればお知らせしますね。

続編も続々執筆中で、インド国内でも高い評価を頂いています。




サンスクリットの表記文字を勉強するのにも、
良い学習教材が無い!
と常日頃思っていたので、自分で作りました。



スマホやタブレット、PCから
正しい発音の音声と、書き順の動画が確認出来る
電子書籍版も人気です。

サンスクリット語とヴェーダーンタをより多くの人にわかりやすく伝える為に、
いろいろな本を執筆しています。
Medha Michikaの著書




初心者向けにこういうのもありますよ。

University of British Columbia - Devanagari Writing Tutor
書き順が、、ですが、気にしない!良く出来たサイトです。

Australian National University - Asian Pacific Language Study Course
発音が、、ですが、とても良く出来たサイトです。