2017年12月20日水曜日

88.観音さま(アヴァローキテーシュヴァラ)についてのサンスクリット語


観音様って、どういう意味で、そういう名前になったの?
音を観てるの?と気になったので、調べてみました。
「観」は、サンスクリット語からの意訳で、
「音」の方は意訳の音から来ているようで、諸説ありそうなので、
ここでは、サンスクリット語の真言と名前の由来について書きますね。


観音様の真言

オン・アロリキャ・ソワカ om ālolik svāhā
ということですが、

サンスクリット語では、観音様の御本名は、
अवलोकितेश्वर(アヴァローキテーシュヴァラ)という、
男性形の言葉のようなので、
स्वाहा(捧げものをする時の言葉)は、चतुर्थी विभक्ति(第4格)を取るので、
観音様の御真言をサンスクリット語で言うと、
ॐ अवलोक्तेश्वराय स्वाहा(オーム アヴァローキテーシュヴァラーヤ スヴァーハー)
となります。

観音様のサンスクリット語の名前の由来

観音様は、サンスクリット語で、アヴァローキテーシュヴァラ(अवलोकितेश्वर([avalokiteśvara])という名前で知られていますが、
ヴェーダの文化で知られている名前ではなく、仏教の中での名前のようですね。

観音様のサンスクリット語のお名前の語源ですが、
अवलोकित(アヴァローキタ)と、ईश्वर (イーシュヴァラ)という、
ふたつの言葉の複合語(サマーサ)になっています。

ईश्वर (イーシュヴァラ)は、ヴェーダの教えの言葉そのものですね。
ヴェーダーンタの教えに沿って記事を書いています。

अवलोकित(アヴァローキタ)という言葉の意味はどうでしょうか。
लोक् というのは、「見る」という意味の動詞の原型です。
これは、लोकृँ दर्शने  (1A)と、文法家パーニニも定義しています。
そこに、अव [ava] というउसपर्ग(動詞への接頭語)をつけて、
さらに、「~した」という意味の、इत [ita] という動詞の原型への接尾語をつけると、
 「見られた、知られた」という意味の「अवलोकित(アヴァローキタ)」という言葉が出来ます。
Wiki英語版では、अवलोकित(アヴァローキタ)を現在分詞として解釈し、
「見ているイーシュヴァラ」としていますが、
パーニニの文法では、それを裏打ちするのに決定的な規則はありません。

「その人によって、イーシュヴァラは知られた」という意味でとられるのが、
文法的にはすんなり来ますね。
(अवलोकितः ईश्वरः येन सह अवलोकितेश्वरः। 113B)
複合語に使われている単語以外の言葉の意味を示す複合語(バフヴリーヒ)として
理解されるような言葉の組み合わせだからです。
(パーニニ・スートラ 2.2.36 निष्ठा । ~ बहुव्रीहौ पूर्वम् に依る)

般若心経のサンスクリット語の原文

観音様から、三蔵法師、持ち帰った文献につながり、
調べたついでに、般若心経のサンスクリット語原文を、
短い方と長い方、どちらも読んでみました。

(こいうのをさっと読めるサンスクリット語と、पञ्चस्कन्धが何かとかが分かる教養を与えてくれた、インドにいる私の先生方に感謝します。。)

「仏教の『空(シューンニャ』は、ヴェーダーンタの教えと同じではないか?」
という質問はよくされますが、般若心経の原文を読む限り、
そうとるのは難しいですね!と言うしかないですね。
それは何故か?というのを説明しても、サンスクリット語はもちろん、ヴェーダーンタもきっちり学んでいなければ、誤解しか生まないので、ここでは避けますが。。





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2017年11月8日水曜日

フランス語とスペイン語特集 「オレンジ」もサンスクリット語起源!? 英語・ラテン系言語と似ているサンスクリット語 その4



オレンジ


サンスクリット語: ナーランガ(nāraṅga
スペイン語: ナランハ(naranja

これ、すごくないですか?ジャングル並みの大発見でした。
これは、ヒンディー語やマラティ語で、ナーランギー(nāraṅgī)と呼ばれているのを知って、気づきました。

ちなみに、スペイン語では、Jの音は、喉から出る「ハ」の音になりますね。
ハポネッサ(日本人女性)とか。

ちょっと気になったので、ポルトガル語を調べてみると、laranja でした。

ん?Orangeに似てない?もしやと思い、Ok, google, とアシスタント機能を使って、
「オレンジ」は何というか?ポルトガルからインドまで、陸続きになている各国語の言葉と発音を調べてみました。(Google音声の英語版の精度はすごい!日本語版は改善の余地たっぷりすぎ。これからはどんどん音声で作業したい。じゃないと目が疲れすぎる。)
laranja (ポルトガル語, naranja(スペイン語), taronja (カタラン語), laranja(バスク語)
orange(フランス語), arancia (イタリア語),aurantiaco (ラテン語)
portokáli(ギリシャ語), portokalova (マセドニア語) , p’ort’okhali(ジョージア語)
ここなへんから全然違う音になる??

https://en.wikipedia.org/wiki/Orange_(fruit)#Etymology
調べてみると、こういうことでした。

オレンジの起源インド。語源はサンスクリット語のナーランガ(nāraṅga)から。
नारं गच्छति 等、ちょっとこじつけのようなサンスクリット語の定義もいくつかあります。

最初に欧州に持ち出したのは、ポルトガル商人だそうです。
ゆえに、ギリシャやスラブ語圏では、ポルトガルの~みたいな名前。

ペルシャ語やアラブ語でも、nārang/nāranj。

ちなみにインドでは、
nāraṅgī (クジュラート語、ヒンディー語、マラティ語)
nārin̄ja (テルグ語)ōṟañc(マレーヤラム語), ārañcu (タミル語) ここのCの音はJです。
不思議なのは、
kittale(カンナダ語)kamalā(ベンガル語)、オリアではどう言うのでしょうか?
バルミーズ以東は、全然ちがう音でした。

まだ、ヒンディーでは、サンタラーとも言います。その影響も近隣諸国で見られます。

この記事を書いている途中にテンプルに行ったとき、プリースト(祭司)からもらったプラサーダムもオレンジでした!



サンスクリット語: パダ(pada
フランス語: ピエ(pied

そこから英語でも、ペディキュア、歩行者(pedestrian)、ペダル、等いろいろあります。
足に特化したお医者さんは、podiatristですね。

二本足(dvi-pad) とはサンスクリット語で、二足歩行する者=人間とか
四本足(catuṣ-pad) とはサンスクリット語で、四足歩行する者=動物とか

私の好きなシャンティ・パータのひとつに、どちらとも出て来て、
それらの幸福(スヴァスティ)が祈られています。

ちなみに、
三本足(tri-pad) とはサンスクリット語ではなぜか、木の種類らしい。
英語で「トライポッド」は、三脚のことですね。

百本足(centi-pede) は英語・フランス語共通で、ムカデ(百足)のこと。
千本足(milli-pede) は英語・フランス語共通で、ゲジゲジ(蚰蜒)(のこと。

どっちも同じだと思っていましたが、使い分けられているようですね。
今回調べてみて初めて知りました。
私の感覚では逆で、ムカデの方がゲジゲジよりも足が多いと思っていました。
でもまぁ、この名前の付け方も、実際の足の数を反映しているとは思いませんが。

最近雨季なので、こちらのインドの山奥のアシュラムでは、
いろんなサイズ・形のこの人たちがいっぱいいます。

ちょっとサンスクリット文法の話をさせてもらいますと、
ここで紹介した「数字+足」の複合語は、梵・日・英・仏、どれにおいても、
複合語が指している意味が、複合語中にある言葉の意味では無い、
という、「バフヴリーヒ」というタイプの複合語になります。

つまり、複合語の意味である、人とか動物とか、三脚もムカデもゲジゲジは、

複合語の前の部分の言葉の意味(数字)でもなければ、
複合語の後ろの部分の言葉の意味(足)でもない、
複合語の構成要素となっている言葉とは、別の言葉の意味になっている、
ということです。

サンスクリット語の複合語(サマーサと呼びます)の基礎知識だけをまとめた本を書くぞ!
少しの知識で、たくさんの愉しみが増えます。


部屋、ホール


サンスクリット語: シャーラー(śālā
フランス語: サル(salle

ヤッグニャ・シャーラー(儀式をする部屋)とか、
パータ・シャーラー(ヴェーダの勉強をする学校)とか言いますね。
salle de bain お風呂、salle à manger ダイニング・ルーム

ヤッグニャ・シャーラーはこんな感じ。クンバコーナムにて。

ヴェーダ・パータシャーラーでは、プランマチャーリン達がヴェーダの詠唱を先生から学びます。(自分で勝手に見様見真似で学ぶものではないですよ。)



お金関係


サンスクリット語: アルジュ(arj) とは、「稼ぐ」という意味の動詞の原型。
フランス語: アルジャン(argent)とは、「お金、銀」という意味の名詞。

ちなみにフランス語で「働く」 は「トラヴァイエ travailler」ですね。


argent は銀という意味でもあります。

膝(ひざ)


サンスクリット語: ジャーヌ(jānu
フランス語: ジュヌ(genou



若者・若さ


サンスクリット語: ユヴァン(yuvan
フランス語: ジュンヌ(jeune

いろんな言語で、YとJはごっちゃになりますよね。

英語でも、リジュビネート(若返る)、ジュビナイル・コート(少年裁判所)とかありますね。



家族シリーズ

お母さん

サンスクリット語: マートゥル(matṛ
フランス語: メール(mère
 

お父さん


サンスクリット語: ピトゥル(pitṛ
フランス語: ペール(père


お母さんをお父さんの前に持ってきたのは、
サンスクリット語の習慣に沿ってのことです。

「父母」を一語で表現する場合は、
「より尊敬されるものが前にくること」
というサンスクリット語の文法規定に従って、
「マーター・ピタラウ」 という形になります。


兄弟

サンスクリット語: ブラートゥル(brātṛ
英語: ブラザー(brother) フランス語: フレール(frère


姉妹

サンスクリット語: スヴァスル(svasṛ
英語: シスター(sister) フランス語: サール(soeur





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関連記事: 
ャングルはサンスクリット語だった!? 英語・ラテン系言語に似ているサンスクリット語 その1 

英語・ラテン系言語と似ているサンスクリット語 その2 

英語・ラテン系言語と似ているサンスクリット語 その3 

2017年11月7日火曜日

代名詞と数詞の比較をまとめてみました - 英語・ラテン系言語と似ているサンスクリット語 その3

 

英語とサンスクリット語の代名詞の比較


英語のthatは、サンスクリット語ではtat

二人称の代名詞youは、
複数形だと、yūyam/yuṣmān 、、と全て「Y」の音から始まる代名詞が使われます。

一人称複数の代名詞は、主語以外では、us, ourと、「ア」の音が使われますが、
サンスクリット語でも、asmān, asmākam と、
主語以外は全て「ア」の音から始まる代名詞が使われます。


フランス語とサンスクリット語の代名詞の比較


ラテン系言語全般に同様ですが、代表としてフランス語を例にとって、
サンスクリット語との代名詞を比較してみましょう。

一人称単数の代名詞は、「」の音から始まります。

フランス語: me, mon, ma, moi
サンスクリット語: mām/mā/mayā/mahyam/me/mat/mama/mayi

二人称単数の代名詞は、「」の音です。
フランス語: tu, te, ton, ta, toi
サンスクリット語: tvam/tvām/tvā/tvayā/tubhyam/te/tvat/tava/tvayi

一人称複数の代名詞は、「」の音ですね。
フランス語: nous
サンスクリット語: naḥ(短い形)

二人称複数の代名詞は、「」の音です。
フランス語: vous
サンスクリット語: vaḥ (短い形)

疑問詞は、「K」の音です。
フランス語: ケ(何) que、キ(誰) qui、コン(いつ) quand、コモン(どんな) comment、コンビャン(どれ位)combien
サンスクリット語: キム(何, 誰)kim、カダー(いつ) kadā、カタム(どんな) katham、カティ/キヤット(どれ位)kati/kiyat



フランス語とサンスクリット語の数詞の比較

数詞を比較してみましょうか。


表1: サンスクリット語とフランス語の基数の比較




サンスクリット語
フランス語
1
eka
un/une
2
dvi
deux
3
tri
trois
4
catur
quatre
5
pañcan
cinq
6
ṣaṣ
six
7
saptan
sept
8
aṣṭan
huit
9
navan
neuf
10
daśan
dix

そっくりですね。

表2: サンスクリット語とフランス語の序数の比較




サンスクリット語
フランス語
1st
prathama
prem-ière
2nd
dvi-tīya
deux-ième
3rd
tri-tīya
trois-ième
4th
catur-tha
quart-ième
5
pañca-ma
cinq-ième
6
ṣaṣṭha
sixi-ième
7
sapta-ma
sept-ième
8
aṣṭa-ma
huit-ième
9
nava-ma
neuv-ième
10
daśa-ma
dix-ième

基数にMの音の入った接尾語をつけてるあたりが似てると思いません?




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ャングルはサンスクリット語だった!? 英語・ラテン系言語に似ているサンスクリット語 その1 

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