2016年6月28日火曜日

77.シッダールタ (सिद्धार्थः [siddhārthaḥ]) 


発音しても、意味を見ても、いい名前。。。


「シッダールタ」の意味


「その人の、人生のゴールが達成された人。」

日本語で言うと、ぎこちないですね。。


サンスクリット語で言うと:

सिद्धोऽर्थो येन/यस्य स इति सद्धार्थः । (113B/116B)
siddho’rtho yena/yasya sa iti saddhārthaḥ |

ちなみに、最後の記号は私が開発した、複合語(サマーサ)の短縮コードです。

とても便利なので、数年前に発表して以来、世界標準になりつつあります。

って、サンスクリット語を勉強しているすごーく小さな世界の標準ですが。

でも、知らない間にいろんな人が私のコードを解読して、

使ってくれているのをみると、嬉しくなります。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102001115/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4102001115&linkCode=as2&tag=blogsyahooc0b-22
ヘッセの小説が有名ですね。

シッダールタの語源


語源を文法的に、ゆっくり丁寧に見ていきましょう。

・ シッダ सिद्धः siddhaḥ 達成された


सिध् sidh は 「達成する」という意味の動詞の原型です。

そこに、क्त kta という、「~された」という意味の接尾語が付きます。

ふたつ併せると、「達成された」という意味になります。

ちなみに、क्त ktaの最初の k は、sidh にグナを起こさないための印です。

何が達成されたのでしょうか?


 ・ アルタ अर्थः  arthaḥ 意味


これは人生の意味、そう、プルシャ・アルタ पुरुषार्थः  puruṣārthaḥ です。

(プルシャ・アルタについてきちんと知りたい方は、

是非、タットヴァ・ボーダという文献を、正しい先生をみつけて勉強してみてください。)

プルシャ・アルタって4つあるけど、どれかな?

ってもちろん、最後のモークシャ मोक्षः mokṣaḥ でしょう。

限りのあるゴールである、最初の3つのうちのどれかだったら、

後世に残す名前としては、、というか、限りあるゆえに、

「シッダ!(完全に)達成された!」とは言えないですね。

本当の意味でシッダ!と言えるのは、最後のモークシャ मोक्षः mokṣaḥ だけです。

ちなみに最初の3つは、

1.安全・安心を満たすという意味でのアルタ अर्थः arthaḥ 、

2.感覚を通した気持ちいい!楽しい!という幸福感であるカーマ कामः kāmaḥ 、

人類の大半は、この2つを達成するために忙しく奔走しながら、

一生の全部の時間を過ごして終わります。

3.そして稀に、アルタとカーマを犠牲にしてでも追及するべき道徳価値である

ダルマ धर्मः dharmaḥを最高の価値として行動し、人間としての成長を高めていく人もいます。

ダルマに価値を見出して実行し続けた人が、モークシャの可能性に気づき始めます。


話を戻して。

人生の意味が達成されたのですね。

誰の? यस्य yasya その人自身の (अर्थ の所有を表す第6格)

誰によって? येन yena その人自身によって (सिध् の कर्ता を表す第3格)

どちらでも意味が通るので、ふたつ用意しました。


シッダ सिद्ध + アルタ अर्थ を足して、

「ア+ア」の部分が「アー」になって、(ディールガ・サンディというやつですね!)

「シッダールタ  सिद्धार्थ 」の出来上がり。


シッダールタは後に、その名の通りの人間となるわけですが、

どうやってそうなったのかと言うと、

ブッダ बुद्धः buddhaḥ 知った。


बुध् budh は 「知る」という意味の動詞の原型です。

そして、「~された」という意味の क्त kta という接尾語が付いて、

「知った」という意味になります。

सिद्ध と同じ造りですね。

知るには必ず、プラマーナが必要です。

瞑想ではबुद्ध buddhaにはなれません。


私の尊敬するふたりシッダールタ君の紹介


個人ネタ?のようですが、どちらもワールド・クラスに素晴らしい人です。


1.リシケシの、オームカーラーナンダ・アシュラムの、

アイアンガーの先生、ウーシャー・デーヴィーの息子、シッダールタ・クリシュナさん

母国語がサンスクリット語であることで有名ですか、もちろんそれだけではない。

幼少のころから、ヴェーダ文献の英才教育を受けていて、

超能力者級に頭脳明晰で、同時に生粋のサードゥ。思いやりに溢れています。


素敵な表紙。

彼が20代の頃に著した、

私がいつも持ち歩いている愛用の文法書です。

昔は私の文法の相談にも、とても親切に応えてくれていました。

中身はこんな感じ。もちろん全部サンスクリット語です。

本当に良くできた本です。どこを読んでもすごい。



私が愛用しているサンスクリットのフォントも彼が開発しました。

彼は天才すぎて、彼の天才の価値を分かる人が、この世にあまりいない、

という、生まれる時代間違っちゃった?という位の、歴史やぶりの天才さです。

ちなみに彼は私よりも年下。


2. もうひとりの天才シッダールタ君は、もっと年下です。

こちらに彼がペラペラにサンスクリットを話しているビデオがあります。

(彼の話している内容は、今日私が書いたコラムにも共通しています。)

アメリカ育ちのタミル人。

彼も幼少のころから英才教育を受けていて、現代の教養はもちろんですが、

ヴェーダの詠唱が出来るヴァイディカの暮らしをしていて、

カルナータカ音楽の歌手でもあります。

弟もいて、同様に、めちゃくちゃ賢くて、芸術的才能にあふれていて、

まだ子供なのに、誰に対してもやさしくて思いやりに満ちています。

家族ぐるみでプージヤ・スワミジの生徒だったので、よくアシュラムに来ていました。


サンスクリット語、ヴァイディカ、芸術、思いやり、など、

二人のシッダールタ君に共通する点はいろいろありますが、

とにかく、どちらも、お母さまが素晴らしい!

मातृमान्  mātṛmān (正しい母親を持った人)とは、

人生において、本当の意味で成功した人を指す言葉です。


彼らのような才能に溢れる人々に、これからのさらなるご活躍を期待しております。



<< サンスクリット語一覧(日本語のアイウエオ順) <<

こちらも:
50.ヴェーダ(वेदः [vedaḥ])- 知る手段


सिध् + क्त がどうやってसिद्धに?と気づいた人へ、

सिध् + क्त    3.2.102 निष्ठा ।
सिध् + त      1.3.8 लशक्वतद्धिते ।, 1.3.9 तस्य लोपः ।
सिध् + ध      8.2.40 झषस्तथोर्धोऽधः।
सिद् + ध      8.4.53 झलां जश् झशि ।

बुध् + क्त も同様です。