2014年2月22日土曜日

16.オーシュタ(ओष्ठः [oṣṭhaḥ] )- くちびる

ओष्ठः
[oṣṭhaḥ]


masculine - くちびる




サンスクリット語の発声法


「オー」や「ウ」の音を出す時は、唇をすぼめますね。

また、「パ」や「バ」、「マ」という音を出す時にも、唇を使います。

これらの音を出す前には、両唇を一回キュッと閉じて、

それから、唇を開ける時に、これらの音が発声されるのです。

サンスクリット語では、言語の中で使われる音のひとつひとつにおいて、

どこの場所から、どのようにして発声されるかが、

事細かに分類されて、それがスートラ形式で教えられています。


上で紹介した「オー」「ウ」「パ」「バ」「マ」などの音が作られる場所は、

「唇(ओष्ठः [oṣṭhaḥ] - オーシュタ)」と分類されます。

普通は唇は2枚なので、スートラの中では、

「ओष्ठौ [oṣṭhau] - オーシュタウ」と両数の形で表現されます。



伝統的に、正しいサンスクリット語を勉強する際には必ず、

まず、発声法から勉強します。

このことについては、タイッティリーヤ・ウパニシャッドではっきりと述べられています。

ウパニッシャッドの冒頭から、

「シークシャー(発声法)について勉強しましょう」

と始まるのです。

さらに、シャンカラーチャーリアは、この部分のマントラについて、

まず一番に発声法を学ぶ重要性について記述しています

サンスクリット語が使われている学問の全ては、

先生から生徒へ、口伝によって引き継がれているのです。

正確に聞き取れる耳と、正確に発音出来る発音器官が頼りですから、

まず、きちんとした発声方法についての科学について、精通していなければならないのです。

ヴェーダを学ぶ際には、ヴェーダの理解を補助する目的で、

ヴェーダの他に6つの教科を学ぶ事になっています。

6つの教科の中で、一番最初にあるのが、発声法です。

発声法については、現在執筆中です。

近いうちに、ウェブでUPして、更新をしながら執筆をしようかな、と考えています。

日本や西洋の大学での勉強の進め方は、発声法という一番大事な部分が欠けています。

有名大学の有名教授でも、サンスクリット語の発音に関しては、

耳も(?)当てられません。


たかが発音、されど発音です。

先生から生徒へ、絶え間なく引き継がれた音には、

学ぶ人への愛情と、幸福を願う気持ちが込められています。


19世紀に、ヒンドゥーの文化を破壊する為にサンスクリットを勉強した学者達

(アントワン、マックス・ミュラー、モニエル、etc.)が残した教科書の中には、

反ヴェーダ文化の作為が、至る所に見られるので、

それらを勉強する事が、正しい方向へ導いてくれるかどうかには、疑問があります。



== ओष्ठः [oṣṭhaḥ] - オーシュタ  が使われている文献 ==

シクシャー(発声法)スートラ
उपूपध्मानीयायाम् ओष्ठौ ।
upūpadhmānīyāyām oṣṭhau ।

  • 長短含めた「ウ」の音
  • (サンスクリットの)パ行(प्, फ्, ब्, भ्, म् [p, ph, b, bh, m])
  • ウパッドマーニーヤ(प्,फ्の前のヴィサルガの音)

が作られる場所は、唇(ओष्ठौ [oṣṭhau] - オーシュタウ)です。





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最重要単語なのに、最も間違って発音&理解されている言葉です。

伝統に沿ってきっちり学びましょう。

  
  

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