2014年9月28日日曜日

32.クーパ(कूपः [kūpaḥ])- 井戸

कूपः
[kūpaḥ] 


masculine - 井戸




いきなり生活臭のする言葉に降りてきました。

哲学的な言葉ばかりを選んできて、なぜ今、井戸なんでしょうかね?

理由は2つ。

ひとつ目の理由は、クー(कू [kū] )から始まる言葉ってあまり無いんですね。

ふたつ目の理由は、サンスクリット語のテキストとして長年流通している、

Antoine(日本語では「アントン」、フランス語では「アントワン」)

という著者のSanskrit Manual という本の中で、

一番最初に出てくる名詞の活用表に登場する言葉だからです。


初級サンスクリットの勉強方法


サンスクリット語の名詞を勉強する時に、一番初めに習うのは、aで終わる男性名詞。

これが基本中の基本です。

そして、普通、aで終わる男性名詞と言えば「ラーマ(राम [rāma])」。

伝統的にサンスクリット語を学べば、必ず、例外なく、最初の言葉はラーマです。

ラーマとは、インド人なら12億人が全員知っている、あのラーマです。

「ラーマ」というアーキタイプ


アーヨーディヤーという国の王子、ダシャラタの息子、

シーターの夫、ラクシュマナの兄、そしてバラタの兄、ハヌマーンの最愛の主、

国民からはもちろん、おおくの聖者から、そして神々からでさえも、深く愛されているラーマ。

ラーマの人格、容姿、全てが人々の心を捉えます。

ラーマを賞賛する言葉だけで、何百何千という詞が出来てしまう、そんな人物がラーマです。

もちろん、ヴィシュヌのアヴァターラなので、ただの人じゃないのですが、

一人の地に足の着いた男性として、ラーマーヤナの中で描かれています。

ラーマーヤナを少しでも読むと、世界中のどんな人だって、

彼が正義の象徴であることが理解出来ます。

そして、どんな人だって、ラーマの話を少しでも聞くと、彼を愛さずにはいられません。

皆、ラーマのことが大好き
そんな完璧な人間なんて滅多にいないからこそ、

100%安心して尊敬出来る、そして愛し、見習える人物像が与えられているのです。

ラーマのような人物像と、絶対的な信頼に基いた関係を持つということは、

人間の精神的な成長に大きく関わるのだと思います。


ちなみに、ラーマという言葉を発するだけで、プンニャですからね。

ラーマを活用して何回も唱えるなんて、かなりのプンニャです。


西欧サンスクリット学者の陰謀


そんなラーマの名前を、幸先のよい一番目のサンスクリット活用表から降ろし、

クーパ(井戸)なんて味気も無い言葉を持って来たのがアントワンです。

アントワンはなぜそのようなことをしたのでしょうか?


答えは簡単です。彼はのクリスチャンの修道士でした。

イギリスやヨーロッパが、インドを植民地化するために、

この何世紀間、現在までも、ヒンドゥー教潰しが盛んに行われています。

キリスト教の布教する人達が、ヒンドゥー教の文化に忍び入って、文化を学び、

ヒンドゥー文化を内側から潰そうとする事は、現在でも一般的に行われています。

アントワンもその一人でした。19世紀にインドにやって来てサンスクリット語を学び、

ヒンドゥー文化の語彙を一掃した教科書を作ったのです。


新しい改革的な教科書の必要性


コンパクトにまとまっている本なので、現在でも一般的に使われている教科書ですが、

私のクラスでは使いません。

使わない理由は、彼の本意があまり正直に感じられない事もありますが、

実際的には、のちのちパーニニを勉強するに当たって、不都合な点が沢山出てくるからです。

アントワンを勉強した人に、パーニニを教えるのは、とても辛いことです。

そんなわけで、現在サンスクリット語を担任させてもらっている、

南インドでの3年コースにおいて、新しい教科書を作っています。

その名も「Sanskrit for Vedanta Student」。

そのうち日本語に訳されて、日本でも勉強し易い環境を提供できるようになりたいです。




    
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不動、不変という意味のサンスクリット語の単語


   
 

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クリシュナの別名「素敵な髪の毛を持った者」という意味の単語

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